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心豊かに暮らせる老後を 地域介護に生かす宗教の力(1/4ページ)

2015年5月13日付 中外日報(深層ワイド)

4人に1人が65歳以上の時代を迎え、10年後には団塊の世代が75歳以上になり、超高齢化社会が到来する。介護や生活支援を必要とする高齢者は、この10年間で倍近くに急増し、高齢者の6人に1人が介護保険の利用者になっている。住み慣れた地域社会の中で、高齢者が心豊かに暮らしていくために、宗教に何ができるのか。寺院の施設やNPO法人では、介護の現場で宗教の力を見直しつつ、地元に根付いた取り組みを模索している。(萩原典吉)

三重県桑名市の大山田ニュータウンにある特別養護老人ホーム・長寿苑では毎日午前10時15分から、施設内の仏間で仏参がある。臨済宗妙心寺派長壽院寺族で副施設長の加藤光貴氏(29)は「認知症で普段は話せない人や対話にならない人も、お経だけは唱えることができる。仏参には意外な力があると感じている」と話す。

同苑の入所者は特養が80人で、入所待ちの待機者が約250人。他にショートステイ20人と定員20人のデイサービスを行っている。入所時には家族に、最期を迎えたときは看取りを行うか、それとも病院へ送るかを尋ねるが、9割が施設内の看取りを希望するという。

厚労省は4月から特養における介護報酬の看取り介護加算を強化し、看取り介護を促進している。加藤副施設長も「高齢者が増える中、我々にとって経営的な必要性もあるが、それ以上に社会的責任として看取りがますます必要になってくる」と国の方針には理解を示しつつも、「看取りに対する職員の考え方や教育が追い付いていない」と指摘する。

目の前に、もはや食事もできない、水も飲めない人がいる。そのときはどうしたらよいのか、職員にも葛藤がある。だが「利用者さんの仏事に対する反応を見ていると、宗教の力は大きい。これから看取りの場面に直面した職員や家族さんのフォローにも、宗教の力が生かせるのではないか」と期待する。

同苑に勤務して15年目の家田真由美さん(40歳代)は「看取りの後に施設からお送りする時、可能な限り職員全員が並んでお見送りすることは、以前勤めていた特養では無かったし、他ではあまりしていない。慈悲の心を大切にしている施設だと思う」と話す。

長寿苑は、加藤副施設長の祖父の故加藤知宏・長壽院先住職が1984年に開苑した。地域のニュータウンの開発も同じように30年ほど前から始まり、当初はまばらだった住宅が今は密集している。同苑も地域と共に歩んできたが、これからは地域に開かれた施設になることが課題という。

加藤副施設長は「介護施設はどうしても住民から敬遠されがち。だが地域の人々の高齢化が進んでおり、施設内の看取りへの対応ばかりでなく、どうすれば地域に貢献できるかを考えなくてはならない」と話す。

そこで始めたのが、毎月第1日曜日の「長寿苑カフェ」で、周辺の住宅一軒一軒にチラシを配って参加を呼び掛けた。最近は来場者も増え、行政も住民に案内してくれるようになった。また毎年1回、利用者の家族の交流会では屋台やバザーを出し、長壽院が運営する保育園の園児も集い、地域の人々にも参加を呼び掛けている。

加藤副施設長は「これらの事業を通して、初めてここに入ったという人もいるし、いずれは両親が世話にならないといけないから来てみたという人もいる。今後はカフェだけでなく法話も取り入れるなどして、地域とのつながりを考えていきたい」と話している。