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手を合わせる場が欲しい 復興計画に翻弄される被災寺院(1/4ページ)

2015年9月11日付 中外日報(深層ワイド)

東日本大震災から4年半。各地で復興が少しずつ進み、公的な慰霊施設も計画されている。だが、寺院の復興は一様ではない。市町村ごとで宗教施設への対応に違いがあり、集団移転の対象外となって全くの自力再建を迫られた寺院もある。一方で、行政が整備する土地に墓地を確保できたものの、整備の遅れが影響して離檀者が増えている寺もある。復興計画に翻弄されつつも、その地で宗教者は悲しみを抱く被災者に寄り添い続ける。(丹治隆宏)

蓮の会に訪れた遺族たちに法話する樋口副住職。脇陣(右奥)には震災犠牲者の位牌が並ぶ

復興庁などは8月21日、岩手、宮城両県に整備する「復興祈念公園(仮称)」の基本計画を発表した。陸前高田市と石巻市に建設し、園内には「国営追悼・祈念施設(仮称)」を設置する。

建設予定地の近くにある石巻市門脇地区の浄土宗西光寺で8月11日、「蓮の会」が開かれた。2012年2月から、月命日となる毎月11日に震災で家族を亡くした人々が集まり、胸の内を語り合っている。

遺族らは、本堂に入ると正面の阿弥陀如来に手を合わせ、脇陣に向かった。そこには震災犠牲者の位牌が並べられている。ある女性は我が子の戒名が書かれたものを取り上げて、まるで体をさするように、いとおしそうになでていた。樋口伸生副住職(52)は「何年たったといっても、悲しみは減らない」と語る。

法要後の茶話会で、「復興祈念公園」が話題になった。計画ではもとの街路形態や震災遺構などをデザインに取り入れるとしているが、思いが詰まった場所が「観光地化」されるのではないかと懸念する声が多い。12歳だった三男を失った40代の女性は「公園に一角だけでいいから、本当に手を合わせることができる空間が欲しい」と語る。

市民の意見を聞くワークショップで樋口副住職は、公園内に身元が判明していない犠牲者の遺骨を埋葬する場所をつくるべきだと提案した。「遺骨が見つかっていない遺族は、そこに自分の家族がいるかもしれないと、手を合わせることができるはずだ」と意図を説明する。だが、市の職員から返ってきたのは「前例がない」という言葉だけだった。

昨年、西光寺に「祈りの杜」が造られた。敷地約160平方メートルを整地して、ツゲで小さな植え込みを設け、内部には観音菩薩や地蔵菩薩を置いた。「小さくてもいいから、静かに祈れる場所が欲しい」との思いがあった。

地域では、新しい町を築くための工事が本格化している。「祈りの杜」の前の道路を、大型ダンプカーが土煙を上げて走り過ぎていく。

樋口副住職は「石巻では3500人が亡くなり、それに伴い1万4千人の遺族が生まれた。その方々がどういう思いで暮らしているか、それを考えることが寄り添うことにつながる」と語る。