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小田川の氾濫で本堂などが3メートル以上浸水した曹洞宗源福寺(岡山県倉敷市真備町)。岡山県曹洞宗青年会の会員らが仏具や家具を搬出していた(11日)
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「空き寺」に忍び寄る危険 寺院の後継者不足は深刻(1/5ページ)

2015年11月11日付 中外日報(深層ワイド)

正住職不在の寺院2割占める

仏教10大宗派の後継者不足 中外日報社などの調査

仏教界全体で後継者不足が深刻になっている。中外日報社の調査で、10大宗派6万1789カ寺のうち、少なくとも1万2061カ寺が後継ぎがいないなどで無住、または兼務(代務)寺院であることが分かった。各宗派は会員制の後継者紹介システムなどを導入し対策に乗り出しているが、効果的解決策はまだ見つかっていない。この全体的な流れをどう乗り越えていくのか。外部からの新しい人材発掘にも期待がかかる。(杲恵順)

倒壊前の無住寺の内部。襖は破れ、床は抜け落ち、荒れ放題だった

「山の方で地響きのような音がして土煙が上がっている」。通報を受けた警察官が現場に駆け付けると、戦国時代に建てられ、400年以上の歴史を持つとされる無住の寺が倒壊していた。屋根瓦の重みで本堂が押しつぶされ、辺りには柱やトタン、割れた瓦が散らばっている。警察署は老朽化が原因とみている。

日本各地の、特に過疎が進む山間部で空き寺が増えている。少子高齢化や人口流出に伴う檀家数の減少は寺院の存続に直結し、経済的に困窮した寺院の後継者を探すのは難しい。

倒壊したのは四国地方の寺。約170平方メートルの平屋建てで、標高272メートルの山の中腹に立っていた。約40年前に無人となり、近くに住む別の寺の住職が兼務していたが、2年ほど前からは堂内に足を踏み入れていなかったという。

住職は取材の電話を「もうやめてくれ」の一言で切ってしまった。倒壊後、周囲から責められたのか、苦悩を凝縮したかのような悲痛な声に聞こえた。

過疎地域を抱える地方の他宗派本山の担当者は「この地域の山間部では四つ、五つの寺院の兼務は当たり前。なかなか全ての寺に目を行き届かせることは難しく、住職一人を責めることはできない」と擁護する。

しかし、後継者がおらず「空き寺」となった寺院には、倒壊による人身事故や放火、宝物類の盗難、宗教法人格の悪用などの危険がある。

曹洞宗が10年に1度行っている宗勢調査では、1965年時点で「後継者がいる」と答えた寺院の割合は76・7%だった。しかし2005年には63・4%まで減少。その割合は40年間で連続的に低下している。

浄土宗の12年度調査では檀家数100軒以下の寺院のうち、43%が「後継予定者がいない」と回答した。天台宗では、地方農村漁村部の42%の寺院の後継者が決まっていない(13年現在)。

國學院大の石井研士教授は、日本創成会議が発表した「消滅可能性都市」にどれだけの宗教法人が含まれているかを試算した。そのデータによると、全17万6670宗教法人のうち35%に当たる6万2971法人が、40年までに消滅する可能性がある896の市町村(福島県を除く)に存在していることが分かっている。