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大師信仰に基づく超一級史料 「東寺百合文書」世界記憶遺産に(1/5ページ)

2015年12月23日付 中外日報(深層ワイド)

京都府立総合資料館が所蔵する「東寺百合文書」が10月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録された。文書は京都市南区の東寺真言宗総本山教王護国寺(東寺)に伝えられた、奈良時代から江戸時代初期までの約2万5千通。登録は、庶民の大師信仰など中世日本の社会・生活・文化を知ることのできる史料的価値や、千年以上にわたり文書が保管され、現在はデジタル化してホームページで公開されていることなどが評価された。他の古文書については予算面など保存と活用をめぐる様々な課題がある。(飯川道弘)

世界記憶遺産に登録された東寺百合文書(京都府立総合資料館)

登録をきっかけに百合文書への関心が高まっている。同館で10、11月に開かれた2015年度の百合文書展には、1カ月余りで約3千人が訪れた。

西川武司・歴史資料課長は「来場者はこれまでより1日当たりで4割増えました」と話す。展示された文書の内容を詳しく解説した資料を用意し、来場者から「分かりやすかった」と好評を博した。

同館では来年1~3月に文書の解読講座を開く予定で、90人の定員に対し400人を超える応募があったという。

百合文書は8~18世紀に寺院運営の中で蓄積されたもので、評定引付と呼ばれる会議録や仏事・法会、荘園など所領の経営、裁判の記録など内容は多岐にわたる。日本中世社会の全体像を解き明かす最も優れた基本史料の一つとして研究者からも高く評価されている。

聖教類や真言宗の教義に直接関わるものはほとんどないが、文書の整理、研究に長年携わってきた上島有・摂南大名誉教授は「鎌倉時代から大師信仰が始まり、京都の庶民が1反、2反の小さな土地を東寺に寄進するようになった。こうした記録が文書の中にたくさん残されている。寺院の組織、経営も含めてお大師さん以来の東寺の伝統に由来するものであり、宗教史の文書として超一級だ」と語る。

ユネスコは登録を決めた理由について、委員会での審議内容も含めて公表していない。

日本ユネスコ国内委員会の島谷弘幸・記憶遺産選考委員長は、史料的価値に加えて「保存・管理体制が特に優れている」「全点のデジタル化が完了しウェブ上で公開されている」ことがユネスコでも評価されたとの見方を示している。