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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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“分離の原則”より“信頼の欠如”(1/5ページ)

2016年4月13日付 中外日報(深層ワイド)

“政教連携”の広がり阻むカベ

宗教界と行政との連携が広がりつつある。宗教者の中には“政教分離の原則”が連携の壁になると考える人もいるが、実際には宗教法人や宗教者が地域の信頼を得られていないことが連携の障害となっている場合が少なくない。東日本大震災などを機に災害時の防災協力など様々な場面で行政から協力が求められるようになっているが、宗教者がその期待に応えて、公益性を発信することが重要になっている。(甲田貴之)

宇城市松橋町のウイングまつばせで開かれた終活セミナー

熊本県宇城市の糸山公照・真宗大谷派光照寺副住職(39)は2015年、地域社会の悩み相談所として一般社団法人「あなたの駆け込み寺」を開設した。立ち上げの際、熊本県が活動費を補助する「地域共生くまもとづくり事業」に応募したが、行政側は“宗教”を理由に抵抗感を示した。

「あなたの駆け込み寺」は、人々の悩みを糸山副住職が聞き取り、医師、弁護士、税理士、司法書士、ケアマネジャー、葬儀アドバイザーなど専門家と解決方法を模索する。「地域のお坊さんは門徒から悩みを聞いたり、月参りなどを通じて檀家の家庭の事情をよく知っている。苦しんでいる人がいれば解決したい」

補助申請の窓口の県宇城地域振興局を訪れた糸山副住職は、高齢者に対して地元主体で支援する地域包括ケアシステムにおいて、宗教者が生活支援を必要とする人の窓口になれると訴えた。担当者は連携については好意的だったが、「一般社団法人の事業として進めてもらって構わないが、宗教活動に補助金を出すわけにはいかない。補助事業なので、宗教性を排除してほしい」と求めた。

そして、「僧侶」などの文言を事業内容の書類には入れず、布教・伝道を目的としないことを明記することで、補助を受けられることになった。

糸山副住職は「役場の中には宗教という言葉に対して、オウム真理教やカルトを想定する人もいる。信頼関係をつくっていく必要性を実感した」と振り返る。

同会では現在、悩み相談の他、終活セミナーを開催しており、活動の様子を宇城市の広報紙に掲載してもらうなど、行政との関係を深める努力を続けている。

糸山副住職は「宗教者が社会貢献活動を積み重ねることで、行政からの信頼を獲得していく。最終的には地域包括ケアシステムにお坊さんや牧師さんが入り、住民の支援ができることを目指していく」と語った。