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身体の潜在能力を開花する 祈祷や修行の効果を科学で検証(1/4ページ)

2016年5月18日付 中外日報(深層ワイド)

祈祷や修行の効果を、科学的実験で確かめようとする試みが進んでいる。人体への影響を医療面で役立てられるのではないかと期待する科学者も多い。近年、そのような方向での研究も進んでいる。体験に客観的意義を与える科学は宗教者にとっても有用だが、しかし、科学によって宗教そのものの意義が解明されるわけでないことは、認識しておかねばならない。(有吉英治)

高野山大の「科学と宗教講演会」(2013年、宇宙電波工学が専門の松本紘・京都大名誉教授)

祈祷で遺伝子の活動が変化――。高野山大密教文化研究所や国際科学振興財団バイオ研究所などが行った共同研究が関心を集めている。祈ることで身体の潜在能力を開花させる可能性があるからだ。

実験は2014~15年、横浜市南区の高野山真言宗弘明寺で僧侶と一般の人10人ずつを対象に行われた。僧侶が約1時間半の護摩行を行い、一般の人も同席。行の前・最中・後に採血し、人間が持つ3万余の遺伝子を網羅的に解析した。

遺伝子は親から子へと形質を伝えるものだが、全てが常に機能しているわけではなく、様々な要因によってオン・オフ(発現・停止)を繰り返す。気候や食べ物などの他、精神的ストレスや喜怒哀楽によっても変動する。

僧侶と一般の人で、遺伝子の活動状況を比較したところ、109個のオン・オフに違いが見られた。これらの遺伝子がどのような働きをするかはまだ解明されていないが、免疫に関係するものも含まれていた。

実験では、一般の人にも護摩行の前後でオン・オフが切り替わった遺伝子があり、祈りの場に身を置くだけで作用する可能性も考えられる。

祈りと身体の関係について、欧米では盛んに実験が行われているが、日本ではまだ少ない。研究に加わった大西淳之・東京家政大教授(生化学)は「検証は始まったばかり。阿字観など静的な瞑想、他の宗派の修行との比較など、多くの実験を重ねていく必要がある。祈りを大切にする生活が体に良い遺伝子を活性化させると分かれば、健康増進に役立てることもできる」と期待する。

長年祈りと遺伝子の研究をしてきた村上和雄・国際科学振興財団バイオ研究所長(筑波大名誉教授)も「祈りと体の関係の全容が明らかになるには時間がかかるだろうが、科学的実験の成果が目に見えないものの再評価につながれば」と話す。