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会社員に自己見つめ直す機会 禅・寺での企業研修増える(1/5ページ)

2016年6月1日付 中外日報(深層ワイド)

企業が新入社員を迎えるこのシーズン、いろいろな形で研修が行われている。多忙なサラリーマンに自己を見つめ直す機会を提供する禅や寺院の有用性に着目する企業が増えている。寺院側はより多くの企業に良さを伝えたいが、効果の見えにくい研修の魅力を営利企業に伝えることは簡単ではない。(赤坂史人)

龍源寺の本堂で行われた地元信用金庫の新入社員研修会。松原住職の打つ警策の音が響く

東京都港区の臨済宗妙心寺派龍源寺は年間幾つもの企業研修を行っているが、春は特に忙しい。4月20日午前8時半、地元のさわやか信用金庫の新入社員研修会が本堂で行われた。参加した70人の胸にはピカピカの社章が光り、ひときわ大きなネームプレートには手書きで「大きな声であいさつする」などと、自らの抱負が書き込まれている。

本堂に整列した新入社員は一言も発することなく、ひたすら坐禅。工事現場の重機の音が開け放った窓からかすかに聞こえてくる。警策のパッシ、パッシと乾いた音が響く。

同信用金庫は6年前から同寺で坐禅研修を始めた。4月1日からの新人研修の最終日に坐禅を行い、翌日から各支店に配属される。人事担当者は「環境を変えて自己を見つめ直す時間と捉えている。今の若者は主体性を表すのが苦手。良いものは持っているので、坐禅体験で自分の良さを認識し、発揮してほしい」と研修の目的を語る。

参加者の土屋来夢さん(22)は「明日からのことを考えると、すごく不安で昨夜は眠れなかった。『どうしよう』という気持ちしかなく、それを考えないということすらも考えられなかった。坐禅で肩の力が抜けた。『社会人として新しいステップを踏もう、やるしかない』という前向きな気持ちになれた」と笑顔を見せた。

松原信樹住職(45)は「企業では、効果が見えにくい社員教育などから経費が減らされていく。本来は最も大切なものだが」と述べ、リーマンショック後、急速に研修が減った時期があったという。そして「禅は外から何かを持ってきて自分のものにしようとするものではない。自分の中に本来持っているものを見つけるもの。結局、答えは自分しか出せない」と話す。