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寺と地域の連携に課題 南海トラフ地震への備えは(1/5ページ)

2016年10月26日付 中外日報(深層ワイド)

近い将来発生の恐れがあるとされる南海トラフ地震※に備え、関西圏の寺院では、堂宇の耐震化や発生時の避難計画などの対策を進める所が増えている。東日本大震災や熊本地震で多くの寺院の被災を目の当たりにし、対策を急ぐ必要性を感じている住職らがいる一方、何から手を付ければよいか分からないとの声もある。直近の災害の教訓をどのように生かすのか。かつては地域の防災拠点として機能した寺院が現在、どのような備えをしているのか、その実情を取材したところ地域住民との連携という共通の課題が浮かび上がってきた。(青山智耶)

大阪市作成の「津波浸水想定図」によると、海岸沿いの此花区では最大4~5メートルの津波の恐れがある(同市危機管理室ホームページより)
※南海トラフ地震四国から和歌山県沖にかけての海溝(南海トラフ)でマグニチュード8~9程度の地震が今後30年以内に発生する確率が60~70%と、政府の地震調査研究推進本部が2013年に発表した。大阪府はこれを受け、同年10月に被害想定を更新。大阪市内だけでも早期避難が遅れた場合の死者が約12万人、建物被害(全壊)が約8万棟と想定されている。
 南海トラフを震源とする地震は、100~200年間隔で発生しており、1946年の昭和南海地震では、死者約1300人、家屋の全壊が約1万2千棟の被害が出た。

大阪市危機管理室が公表している被害想定の各区別分布を見ると、沿岸部の西淀川区では、全半壊合わせた建物被害は約3万棟、火災や津波による全体の死者数は最悪の場合約2万人だが、そのうち津波到着前の防潮堤沈下に伴う死者数が約1万3千人と、市内の24区の中で一番多い。海抜が低い上に地盤が弱いため、水害による死者数や建物被害が多いと見込まれている。

同様の原因による被害は海岸に近い此花区や港区でも見られると想定される。

此花区の寺院の住職は「かつて室戸台風が上陸した際は周辺に大きな被害が出たが、その後、土地のかさ上げや防潮堤が整備されたので、そこまで影響はないのでは」と言うが、想定では同区は24区内で最も高い最大4~5メートルの津波が来る恐れがある。

「想定外」とされた東日本大震災で、津波により本堂が全壊した仙台市若林区荒浜の浄土宗浄土寺の中沢秀宣住職(67)は「災害はいつ来るか分からない。それに備えて耐震工事や備蓄品、檀家や地域住民との連携を急ぐべきだ」と経験からアドバイスする。

同寺のあった地区では津波で住民約140人が死亡した。被災後に災害危険区域に指定され、檀家の多くが荒浜を離れたことから、約2キロ内陸側に入った同区荒井に移転を決めた。中沢住職は「関西の寺院も東日本大震災の教訓を生かして災害に備えるべきだ」と訴える。