ニュース画像
初公開の水晶に納められた木造阿弥陀如来像
主な連載 過去の連載
エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 深層ワイドリスト> 宗教界の対応が問われる 日弁連が「2020年までに死刑廃止」宣言

宗教界の対応が問われる 日弁連が「2020年までに死刑廃止」宣言(2/4ページ)

2016年11月9日付 中外日報(深層ワイド)

死刑制度めぐる議論、低調な宗教界 容認派が多数占める世論が背景に

宗教界で死刑制度をめぐる議論は必ずしも活発ではない。死刑執行への抗議や「廃止」決議をしたのは「死刑を止めよう」宗教者ネットワークを構成する真宗大谷派、天台宗、大本、カトリック、日本基督教団など一部の教宗派にとどまっている。容認派が多数を占める国民世論も背景にあるとみられるが、ネットワークでは「なぜ賛成、反対なのかを自分でしっかり考えてほしい」と地道な活動を続けている。


※袴田事件1966年に静岡で起きた強盗殺人・放火事件。袴田巌・元被告の死刑が確定したが冤罪の訴えを受け、2014年3月に静岡地裁が再審開始を決定、元被告は48年ぶりに釈放された。現在、決定を不服とする静岡地検の即時抗告審の審理が東京高裁で続いている。

ネットワークは2003年、聖エジディオ共同体主催の死刑廃止セミナーに参加した宗教者が「死刑、命について考える機会を多く設けよう」と発足した。

各宗教に共通する「命を大切にする価値観」に基づき、「人の命を人の手で奪うことは許されない」「罪を犯した人も悔い改める可能性があり、その機会を奪うことはできない」「被害者の癒やしは刑罰ではなく、被害者への心理的・社会的支援に向けた努力でなされるべきだ」「罪を犯した人の更生を社会全体で支えることで犯罪は抑止できる」との考えに立つ。

一般向けセミナーを年2回、死刑囚、被害者、執行する刑務官ら死刑に関わる全ての人に思いをはせ、執行停止を願う「祈りの集い」を年1回開くなど市民に死刑制度の問題点を提起する。

日弁連の宣言について、阪本仁・大谷派解放運動推進本部委員は「一番大きなポイントは袴田事件※。誤判がある以上、死刑制度は維持できないというのが弁護士たちの意見だ」と話す。

誤判、冤罪の問題は死刑反対の大きな論拠の一つ。宣言では袴田事件の他、過去に4件の死刑確定事件が再審無罪になったことに触れ、「人が判断する以上、えん罪による処刑を避けることができない」と訴えた。

一方、死刑容認の理由として最も主張されるのは「被害者感情」だ。「死刑制度は命の問題だが、宗教者が廃止と言えないのは被害者の命を考えるからだろう。以前、教団に実施したアンケートでもそういう反論があった」と事務局の雨森慶為氏は語る。

教誨師を務める三浦日脩・法華宗本門流本唱寺(大阪府池田市)住職は「仏教的には性善説であり、仏性を持つ人を死刑で裁くことは法華経の考え方からも無くすべきだ。しかし多発する凶悪犯罪や遺族感情を考えると、まだ死刑を廃止する環境は整っていないのではないか」と話す。

日弁連内でも宣言について賛否両論があり、「あすの会」など犯罪被害者の支援に取り組む弁護士らは強い不満と反発の声を上げている。

この点について阪本氏は「存置の問題とは別に(犯罪被害者の)救済制度を作って対応すべきだ」とする。宣言を取りまとめた加毛修・日弁連死刑廃止検討委員長は、聖エジディオ共同体のシンポジウムで「日本は被害者の救済が非常に遅れており、これも最重要課題だ」と述べた。