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難しい高齢住職の出処進退 スムーズな世代交代どう実現(2/4ページ)

2017年2月1日付 中外日報(深層ワイド)

住職が認知症になったケース法務や寺運営に支障 老僧の世話に追われる

住職交代式には大勢の僧侶や檀信徒が駆け付ける(記事の内容とは直接関係ありません)

「高齢の住職が譲ろうとしない」――。そう嘆くのは北関東にある寺院の僧侶A氏(48)だ。実質的に寺院運営を担っているが、まだ副住職にもなっていない。

88歳になる住職は認知症と診断され、介護が必要な状態。体には不自由がなく、一人で買い物に行っては不必要な物を買い込んだり、店とトラブルになったり、また行方不明になったりすることもしばしばあるという。

だが本人に自覚はなく、法務にも積極的だ。A氏らの話では、袈裟や衣は自身で着用できず、法要で導師を勤めると、でたらめなお経を唱えてしまう。葬儀で場にそぐわない笑い話をして、喪主ともめたケースもあった。

檀家から住職退任を迫られると「自分はもう隠居したようなものだから」とはぐらかし、別の時には「自分が住職だ」と主張する。「その時々に変わる発言に振り回されている」とA氏はため息をつく。

数年前、地蔵堂建立を発願した際には、お参りしやすいようにと建設地についても細かく指示を出し、その通りに工事が行われたが、「なぜこんな場所に建てた。自分が知らない間に勝手なことをして」と憤慨した。A氏は「境内のバリアフリー化もしたいが、住職がいる間はできない」と嘆く。

60歳の時には認知症の症状が表れていた住職を、A氏は20代の頃から支え続けてきた。仕事の多くは住職のしりぬぐいで、疲労の色は隠せない。「住職になる前に気持ちがなえてしまった。自分は60歳になったら隠居したい」とまで口にする。

しかし引退後の後継者が見つからないことには隠居もできない。住職が今のような状況では、とても後継者候補を迎えられない。「自分が住職になってから、やらなければならないことが山積している」と声が沈んだ。

萩原直三・曹洞宗社会福祉連盟理事は、認知症になった住職の姿を時々目にするという。副住職からは困惑の声を聞くが、どこの寺院でも住職が病気になったことを外部に漏らそうとはせず、ひそやかに語られるのみで問題は一向に解決しない。

こうした状況を見かねて萩原理事は、本山に高齢者施設を設けることを提案する。亡くなるまで宗教行為が続けられるし、檀家にも本山で暮らしていると言えば聞こえがいいとの理由だ。

「高齢になれば体のどこかに支障が出るもの。しかし僧侶の場合、認知症になっても般若心経を唱えられることが多い。長年読誦してきた経文が体に染み込んでいる。そんな老僧を軽んじるようなことがあってはならない。最後まで尊厳が保てるよう周りの人は配慮すべきだ」

寺院運営などの実務はできなくても、長く仏と向き合い続けてきた生きざまを、檀信徒に知ってもらうことで布教になるとみている。