ニュース画像
避難所となった当時を振り返りながら講話する本川住職
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 深層ワイドリスト> 難しい高齢住職の出処進退 スムーズな世代交代どう実現

難しい高齢住職の出処進退 スムーズな世代交代どう実現(4/4ページ)

2017年2月1日付 中外日報(深層ワイド)

引退し「長老」になったケース

「僧侶は継続」に安心感 若手住職の活動に期待

福田亮雄・現住職が手掛けた供養塔の前に立つ亮成長老

住職を引退した後、どのように身を処すか。天台宗の「名誉住職」、日蓮宗の「院首」など、各宗門には住職引退後の呼称がある。大半は、「前住職」とは違う称号で呼ぶことができるというだけの制度だ。

そんな中で真言宗智山派の「長老」には、管長の被選挙権や各種委員会の委員になる権利が与えられる。実際に管長や委員になろうとして長老を名乗る人は多くないものの、住職退任が僧侶引退ではないという安心感につながっている。

大正大名誉教授の福田亮成・成就院長老(79)は、70歳の大学退職を機に住職を譲った。その後も智山専修学院院長などの要職を務めている。

長老に登録すれば宗費納入の義務を負うことにもなるが、前住職ではなく長老を選択した。「役職に就きたいとは思わないが、住職を退いても智山派僧侶の一員。宗費を払い宗派を見守っていきたい」と言う。

住職を交代したのは、「家制度が崩れたり地域のつながりが薄れてきたりするなど、激変する社会状況に対応するには若い人でなければ」との理由からだ。周りにも長老になった人が何人もいる。「お寺の事情は個々に違うので一概には言えないが、長老制度があるので譲りやすいという点はあるだろう。それぞれに時代の変化に対応する必要性を感じているようだ」と語る。

若い頃から宗門の将来は人材育成がかぎだと考えてきた。特に東京では人の移動が頻繁にあり、様々な事情で遠方に住む檀家が増えた。「地域の人たちがお寺に集まるような教化活動をしたいと思ってはいたが、大学の仕事もあってそこまで手が回らなかった」という。

引き継いだ亮雄住職(49)は、味噌を手作りする「手前味噌の会」、自ら講義する「『源氏物語』を読む会」など、地域の人たちを対象にした催しを次々と始めた。東日本大震災の被災地支援にも定期的に訪れており、境内に岩手県陸前高田市の高田松原の被災松で造立した観音像を祀り、「気仙三十三観音霊場お砂踏み」を設けるなど、これまでにはなかった空気が寺に流れ始めた。

たまには口を出したくなることもあると亮成長老は笑うが、「したいと思いながらできなかったことを、新住職がやってくれている」と目を細める。

今後、社会はさらに平均寿命が延びることが予想される。「住職が100歳近くまで長生きし、副住職が70歳くらいになってから住職を譲られても、もう積極的に何かしようという気力体力はない。40代か50代くらいまでにはバトンタッチされるべきだ」

亮成長老には住職を辞めてからやりたいことがあった。40年来取り組んできた『空海要語辞典』の刊行だ。現在、最終第4巻の校正段階にきている。布教に役立つ辞典として、今年中にも発刊にこぎ着けたいと望む。すでに多くの著作があるが、「学問と信仰をつなげたい。書きたいものはまだたくさんある」。住職であるなしに関係なく布教にかける意欲は変わらない。