ニュース画像
倒壊した浄土真宗本願寺派法城寺の鐘突き堂(むかわ町)
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
時代を生きる 宗教を語る
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 深層ワイドリスト> 東日本大震災6年 七回忌それぞれの思い

東日本大震災6年 七回忌それぞれの思い(1/3ページ)

2017年3月15日付 中外日報(深層ワイド)

語り継ぎ、風化させない

東日本大震災七回忌の11日、岩手県釜石市では仏教会による追悼の灯籠流しが初めて行われた。最大の犠牲者を出した宮城県石巻市では、行政の大規模慰霊行事を避け、遺族と静かな祈りを共にする僧侶がいた。原発事故で被災がなお進行中の福島県では、避難中の住職が離散した檀家を思う。共通するのは、語り継ぎ、供養を続けることで震災を風化させないという思い。復興が程遠い中、この6年を振り返り、それぞれに自らの僧侶としての姿勢、信仰の在り方を問い直す。(北村敏泰)

日蓮宗仙寿院 芝崎惠應住職ずっと慰霊を続けるのが僧侶の使命

橋上の僧侶たちの読経に送られ灯籠が甲子川を下った(岩手県釜石市で)

6年前に河口から津波が押し寄せた釜石の甲子川・大渡橋たもとから午後5時すぎ、死者数と同じ1200基の灯籠が僧侶たちの読経に送られてゆっくり流れ出した。被災者支援を続けてきた地元・釜石仏教会が各檀家から預託された浄財を積み立て、各寺院で手分けして組み立てた。

会顧問の芝崎惠應・日蓮宗仙寿院住職(60)は「年月はたってもほとんどの人が希望を見いだせないでいる。家族の死や生活破壊で震災前の人生の目標が失われ、この先どう生きていくか、と。だからこそ慰霊はしっかりやらなければ」と沈痛な声で話す。被災者たちが“心の復興”の目標としていた市の慰霊施設が予算補助する国の事業の関係で縮小され、建設も大幅に遅れたままなのだ。

震災直後に芝崎住職が近隣の寺に呼び掛けて仏教会を立ち上げ、市の遺体安置所や斎場で読経、避難所や仮設住宅では炊き出しや訪問による傾聴活動など、被災者を心身両面でサポートしてきた。自坊でも最大700人もの人を5カ月にわたって支援し続けた。「人が一番困っているときに役に立ってこその寺だ」と、日を追って強まる信念が拠り所だった。

市の復興アドバイザーになり、会で市と防災協定を結ぶなど、その後も行政との緊張関係で取り組みを継続した。「是々非々ですが、活動の実績があるから当事者でいられるのです」という住職は、震災以前から市民の悩み事相談に携わるなど、「寺は社会の一員」という思いを抱いていた。

だが昨年4月、慰霊施設予定地でがれきの埋納作業に立ち会った際に市長に見通しを問い、七回忌には間に合わないことが判明する。埋納は行方不明者の遺骨埋葬代わりの意味があり、「遺族の落胆を最小限に食い止めよう」と、仏教会で灯籠流しを思い立った。

あの日と同じく厳しい寒さの中、多くの市民が流す灯籠がろうそくの灯を揺らしながらゆっくり川を下る。赤、青、緑色の一基一基に亡くなった人の俗名が記されている。各寺で分担して筆を執り、芝崎住職も名前を書いた中には知人が幾人もいた。1歳後輩の精肉店主とは青年会議所で長く一緒に活動した。「よくけんかもしたけど、遊んだなあ」。顔が浮かび胸が締め付けられる。ここまでの歳月、住職はつらい体験からPTSDにもなり、何度も体を壊した。「でも今後もずっと慰霊を続けるのが私ら僧侶の使命です」

だが各寺への信頼が増した半面、参拝は極端に減り、災厄で人々の信仰心が薄れたままだと感じる。もともと信心で現世の利益を求める傾向があり、それが打ち砕かれた。だが、「信仰とはそんな見返りを求めることじゃないと気付いてもらわねば」と最近、法話の内容を変えた。「普段の行い、日々安穏なことが御利益です」と。そのためには「自分もどんな災難にも揺るがない信仰のために心を磨きます」。薄闇に点々と広がる灯籠の明かりを見送る住職の目が輝いていた。