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寺はよみがえるか ― 変わる葬儀

2017年6月21日付 中外日報(寺はよみがえるか)

進む低価格化「費用かけたくない」半数

故人の死亡と葬儀日程を知らせる新聞の死亡広告だが、近年めっきり件数が減っている(一部を加工しています)
故人の死亡と葬儀日程を知らせる新聞の死亡広告だが、近年めっきり件数が減っている(一部を加工しています)

山形県の葬祭会社社長(67)は「『お金がないので葬儀費用を分割にしてください』と相談されることが年に1度や2度で済まない」とため息を漏らす。依頼者から代金を回収できないケースも年間3件ほどあるという。「誰もが葬儀にお金を掛けたくないのでしょう」

日本消費者協会の「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書」(2017年)によると、「自分はどんな葬儀にしてほしいか」という設問に対して、半数以上の54・9%が「費用をかけないでほしい」と回答している。

葬祭業に関わる関係者は「最近は事前相談が当たり前になった」と口をそろえる。自らの葬儀を見越して訪ねてくる高齢者もいれば、看取りの時期に差し掛かった親を持つ子どもがやって来ることもある。訪れた人々から聞かれるのは「子どもに迷惑を掛けたくない」「簡単に済ませてほしい」といった経費面を心配する声の数々だ。

葬儀費用をできる限り抑えようという傾向は布施にも及ぶ。インターネット上には「お布施3万円」「居士・大姉5万円」などと金額を明示したサイトが散見される。こうした情報を基に、檀信徒から「お布施が高過ぎる」などと不満を言われる僧侶も少なくない。

東京都品川区の70代の住職は、3年ほど前の出来事が忘れられない。檀家から母親の葬儀をしてほしいと電話があった。戒名と葬儀の布施の目安を示したが、「高い」と拒絶された。そこで「最低のライン」の金額を伝えたが、「ネットでは10万円だった。なぜ、それでできないのか」と電話を切られた。

故人の意向が「費用をかけたくない」という遺族らの考えで、ないがしろにされることもある。20年以上の付き合いがあり、「亡くなったら住職が葬儀してくれよな」という男性の檀家がいた。だが、家族は音楽葬にすることを決め、「戒名は結構です。お布施にお金がかかるなら、わざわざ来ていただかなくても結構です」と言われた。

この住職は今年3月の彼岸で、檀信徒に「ご不幸があったら、まずお寺に伝えてください」と呼び掛けた。こんなことを話すのは初めてだった。「本当に恥ずかしかった。死んでもいない人を前に、まるで死んだら俺に葬儀をさせろというような感じがして」と打ち明ける。「若い人に、葬儀の意味が伝わっていない。だから、全ての基準は金になってしまう」

低価格の葬儀を追求する傾向は、新聞業界にも影響を及ぼしている。ある地方新聞の関係者は「死亡広告の掲載件数は確かに少なくなっています。ピーク時の10~20年前に比べ、ほぼ半減です」と言う。「黒枠」と呼ばれる死亡告知広告は、2段数センチ幅で数十万円と単価が高く、地方新聞には「ドル箱」だった。「広告収入が伸び悩んでいる新聞界に『黒枠』の減少は痛い」

減少した理由についてこの関係者は▽ネット時代になり、葬儀を新聞でチェックしなくなった▽取引先の多い大企業か地元の老舗企業でないと告知を出さなくなった▽地域の中小葬儀社が減り、死亡広告の仲介をしなくなった――などを挙げた。

京都、滋賀で葬祭サービスを提供する公益社の営業部部長・加藤栄二さん(74)は、葬儀の低価格化について、1990年代前半に起こったバブル崩壊の影響を指摘する。「安ければいいという時代が長く続き、それが当たり前になった」

加えて、葬祭業に新規参入した企業が低価格を前面に打ち出し、同業者間の価格競争が起きた。「この流れは、しばらく続いていくだろう」と見通しを語った。