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寺はよみがえるか ― 変わる葬儀

2017年6月23日付 中外日報(寺はよみがえるか)

導師ひとりで荘厳さ守りつつ簡素化

一人で厳かな葬儀をするための日蓮宗の研修会
一人で厳かな葬儀をするための日蓮宗の研修会

群馬県みなかみ町の鈴木潔州・曹洞宗嶽林寺住職(57)は「うちの地域では、今のところ葬儀件数は減っていないが、かつては2、3人いた伴僧が今は少なくなった」と言う。

伴僧とは導師を補佐する役目の僧侶で、鐃鈸や木魚の鳴り物などを担当し、葬儀を厳かにする役目も担う。鈴木住職は、かつては10人近い僧侶で行うこともあったと往時を懐かしむ。

曹洞宗が10年ごとに行っている宗勢総合調査の最新の結果でも、10年前と比べ、伴僧(用僧)に行く回数を「0回」と回答した割合が19・1%から27・9%に増加している。

秋田県の曹洞宗寺院の住職(55)は数年前、葬儀の打ち合わせに兼業農家の檀家を訪れた。82歳で亡くなった父親の葬儀の出仕僧侶の数などを相談した。

和室に通された住職と40代の喪主の男性は正座で膝を突き合わせて対座した。住職が「葬儀の僧侶は何人にしますか」と尋ねると、男性は「普通はどんなもんなんですか」と聞き返した。「2人はいた方が良いですよ」と説明したが、男性は言いにくそうに「和尚さん、何とか一人でお願いできないでしょうか」と声を絞った。

檀家の多くはコメ農家で、年々、経済的に苦しくなっているという。この住職は「本来、複数の僧侶で行ってきた葬儀を一人でやると、本当にくたびれる。読経も鳴らし物をたたくのも全部一人で、葬儀が終わる頃にはくたくた。せわしない葬儀になってしまう」と話した。

儀式の簡素化が進み、僧侶一人での葬儀が主流になりつつあるが、「本来は複数人で行うものだ」と強調するのは、兵庫県多可町の盛田義宣・浄土宗西山禅林寺派専浄寺住職(70)。「葬儀は鐃鈸、経頭、維那がセットです。最低でも役僧3人が必要」。葬儀の意義や荘厳さを大切にする盛田住職は、自分の布施を他の僧侶に回してでも僧侶の数を減らさないようにしているという。

僧侶一人だと経済的にも影響がある。千葉県南部の漁村部にある日蓮宗寺院の30代の副住職は「他の寺の葬儀に呼ばれると、布施収入があるので寺院運営の点では助かっていたのだが」と、思わず本音を漏らした。

大阪府枚方市にある浄土宗寺院の40代の副住職は「従来、役僧は4人つけるのが普通だったが、10年ほど前から2人で依頼されだし、なかなか4人に戻らない。役僧として呼ばれなくなると、寺にとっても打撃が大きい。例えば檀家50軒でも、近隣の同じ規模の6カ寺が協力し合えば、300軒の檀家があるような計算になるのだが」と憂えた。

こうした葬儀の変化を受けて、日蓮宗宗務院(東京都大田区)で8、9日に開かれた布教伝道基礎研修会では上田尚教・護国寺住職(74)が「一人でも厳かに葬儀を勤めるには」をテーマに講義した。

上田住職は「荘厳さを保つことが第一。複数の僧侶でやっていた時と同じように行うと、様々な法具を忙しく手にして、かえって見苦しくなってしまう」と指摘し、引鏧や鈴、磬子など、どれか一つで他の法具を代用して落ち着きや荘厳さのある葬儀にすることが大切だとアドバイスした。

研修会では新命住職の育成に力を入れており、昨年から葬儀を積極的に取り上げている。伴僧が少なくなり、若い僧侶が葬儀に出仕できなくなっていることが背景にある。上田住職は「一人で葬儀をするようになると、(葬儀の)形だけでなく、声明や読経の音調、文言など、細かいところの伝承が難しくなる」と危惧している。