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寺はよみがえるか ― 変わる葬儀

2017年6月28日付 中外日報(寺はよみがえるか)

お寺は怖い「商品化」と非難の応酬

僧侶が面接に来るという東京都品川区の「みんれび」本社。若い社員がパソコンの前で働く
僧侶が面接に来るという東京都品川区の「みんれび」本社。若い社員がパソコンの前で働く

首都圏を中心に全国サービスをうたう僧侶派遣サービスが活況だ。インターネットが普及し、菩提寺と深い関係がない人たちは葬儀をネットで検索して依頼する。

「アマゾンに出店してから僧侶の登録が3倍になりました。もうすぐ千人になります」。そう話すのは、葬儀のベンチャー企業「みんれび(本社・東京)」の中島英摩・広報担当(32)。2015年12月、ネット通販大手のアマゾン・ジャパンに定額で僧侶の紹介を行う「お坊さん便」を提供したところ、葬儀の問い合わせが倍増し、僧侶の登録も激増した。

全日本仏教会はアマゾンに「宗教行為を商品にしている」などと抗議したが、一般の人たちからは「商品化しているのは仏教界だ」などの厳しい意見が相次いだ。

みんれびは「あくまでも菩提寺のない人や、菩提寺の許可を得た人のみが利用できるため、仏教界のしきたりを壊すものではない。むしろ経済的な理由などで弔いたいのに弔うことのできない人に手を差し伸べるサービスなので、仏教界と同じ方向を向いている」と話す。

「実際、葬儀以降、法事をしてこなかった遺族がネットを通じてサービスを知り、十三回忌から再開した例もある」などと、一般の人と僧侶との縁をつなぐサービスであると強調する。

こうした僧侶を葬儀や法事に手配するサービスはネット上にあふれ、1回の法事、法要が3万5千円などと料金も明示している。ある派遣業者に登録している神奈川県の浄土宗僧侶(63)によると、3万5千円のうち1万5千円は企業の手数料で僧侶の取り分は2万円という。

この僧侶は「仲介する企業は余りにももうけ主義だと感じている。電話で依頼を受けて僧侶につないでおしまい。あとは施主と僧侶で全てやってくれというスタンス」と話す。また交通費等が料金に含まれていないので「2万円では割に合わない」とも。法衣や塔婆を運ぶので自家用車での移動が必要だし、戒名や葬儀の事前相談で何度も遺族と電話でやりとりしなければならないからだ。

都内に住む女性(57)は、2年前に81歳で亡くなった父親の年忌に僧侶派遣を依頼した。「知り合いの僧侶がいないわけではないが、相談したら、その後、関係を断れなくなるのではないかと思った。やっぱりお寺に相談するのは怖い」と話す。

父の葬儀には僧侶を呼ばなかった。前に亡くなった母親の葬儀の際、葬儀費用が高額だったこともあり、家族だけで火葬を済ませた。ただ火葬場で読経ぐらいはしてもらえるものと思っていたが全くなかったため、「父親に申し訳なかった」と後悔した。

そこで年忌を営もうと、費用などについて友人にも聞いたが、「お布施が『お気持ち』だったり、料金もバラバラで不安になった」ため、料金が明示されていたネットを利用した。

「ビジネス」と割り切っている僧侶もいるが、派遣されてきた僧侶は女性の家庭環境などの身の上話を親身に聞いてくれたという。それ以来、派遣企業を介さずにこの僧侶に年忌を依頼、信徒になった。

登録している50代僧侶は「派遣で出会っても信徒となるケースが多くある。弔いたいが、どこに相談したらよいのか分からない人や、お寺の檀家になるのが嫌だという人たちもいる。利用者の様々な声を聞くと、自分自身を含め、なぜ伝統仏教界は寺院と縁のない人たちにもっと親身になろうとしないのかと自省を込め憤りを感じる」と、仏教界に意識変革が必要だと指摘した。