ニュース画像
60周年記念式典で被災地の復興を祈念する各宗派の管長や来賓
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版
トップ> 寺はよみがえるかリスト> 変わる葬儀 その寺院号

寺はよみがえるか ― 変わる葬儀

2017年6月30日付 中外日報(寺はよみがえるか)

その寺院号袈裟で隠す真の戒名料

インターネット上には「戒名料」の料金がいくらでも出てくる(一部画像を加工しています)
インターネット上には「戒名料」の料金がいくらでも出てくる(一部画像を加工しています)

愛知県刈谷市で浄土真宗本願寺派の都市開教専従員をしている竹本崇嗣さん(40)は、その話を聞いて「おかしい」と思った。

今年1月のことだ。年末に父の葬儀を行った近所の30代の姉弟が仏壇の入仏式の依頼にやって来た。葬儀はインターネットで見つけた地元の葬儀社に僧侶の派遣を含めて依頼し、岐阜県から来た本願寺派の僧侶が勤めたという。

姉弟が選んだ葬儀プランは約16万円。親戚から院号法名を付けてもらうよう勧められたので、その僧侶に相談すると「院号込みで(葬儀料を)30万円にしましょう」と言われた。

本願寺派の院号法名は本山本願寺に「20万円以上」の懇志(布施)を納めた人への「お扱い」の一つとして交付する。本山に申請せず、住職や寺院の判断で授与するものは「その寺院号」「町版院号」などと呼ばれ、本山では認めていない。

竹本さんは「本山への院号申請には最低でも20万円かかり、30万円ではその僧侶と葬儀社の取り分は合わせて10万円にしかならない」と指摘。姉弟が岐阜の僧侶に確認すると「あと6万円追加してほしい」と申し出たという。2人はやむなく追加で6万円を支払い、本山から無事に院号が交付されたが、「もう、この僧侶を一切信用しない」と激怒した。

「『その寺院号』を授与して、差額を自分のポケットに入れようとしたのでしょう」という竹本さんは「仏教を貶めているのは、私と同じ袈裟を着た人々なのかもしれない」と嘆いた。

戒名・法名をめぐるトラブルは以前から指摘され、2000年1月に全日本仏教会が「今後、“戒名(法名)料”という表現は用いない」との見解を発表して各派に啓発を呼び掛けた。しかし、現在もインターネットで検索すれば“戒名の料金表”がいくらでも出てくる。

滋賀県東近江市の瓜生崇・真宗大谷派玄照寺住職(43)は数年前、ある僧侶派遣会社から「派遣先の葬儀で12~13万円の院号を出しませんか」と誘われた。

大谷派の院号が本山への「8万円以上」の懇志に対する「賞典」として交付されることを知った上での話で「12~13万円の院号」は「その寺院号」だ。「院号の需要は多いんですけどねえ」。受話器の向こうから、そう勧誘する若い男性社員の声が今も耳に残る。

瓜生住職は「私は断ったが、便乗する僧侶がいるということだろう」とし、「現実には本山を含めて法名が商品化している側面は否めない。具体的に『院号がいくら』という話になると、どうしても僧侶の側も欲がかき立てられてしまう」

本来、仏教徒となった証である戒名・法名は授戒会や帰敬式などで生前に授与を受けるものだ。

浄土宗では授戒会で「道号」を授ける他、五重相伝と呼ばれる法会の受者には「誉号」と「禅定門(尼)」を授ける。同法会は3~7日の期間に10~20回の説教を集中的に繰り返すなどして教えを伝える。

五重相伝は運営に多大な労力がかかり頻繁に開催するのは難しいが、奈良県葛城市の横井照典・浄土宗極楽寺住職(83)は「五重相伝を受けないと本当の仏教の教えは分からない」と、5年に1回は必ず行い、ほぼ全ての檀信徒が満行する。

「戒名は『五重相伝の卒業証書』と説明しているが、みんな『私は浄土宗の信徒』とはっきり自覚する」とし、「うちの寺では葬儀で戒名が話題になることはない。戒名料をめぐる話を聞くと日本の仏教はこれでよいのかと思う」と語った。