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寺はよみがえるか ― 檀家制度

2018年1月24日付 中外日報(寺はよみがえるか)

「『うちも後を護る者がいないので墓じまいしたい』と申し出る檀家が出始めた」。京都市の中心にある寺院住職がしみじみとした口調でこう話した。これまでそんなことを口にしたことなどない人が初めて「弱音」を吐くのを聞いた。墓じまいは檀家の減少を意味する。檀家制度に支えられてきた伝統仏教教団の寺院にとっては深刻な問題である。「檀家制度崩壊の危機」が叫ばれて久しいが、果たしてその危機の内実は――。6回にわたって寺院と檀家(制度)の今を探る。(連載取材班)

「檀家」とは何か墓移転に高額離檀料

檀家制度は墓を媒介に現在も維持されている
檀家制度は墓を媒介に現在も維持されている

「墓を移転させたいなら、離檀料1千万円よこせ」。檀家の母娘に乱暴に言い放ったのは新潟県の住職だった。

80代の母と50代の娘。二人は東京都に移り住んで30年以上たつ。母は夫が亡くなった際に菩提寺の境内墓地に遺骨を埋葬したが、これからの維持を考え2016年に墓を都内に移す決心をした。

しかし、住職は高額な「離檀料」を請求。二人は同じ寺の檀家の本家にも相談したが、住職は「1千万円の離檀料」を求めるだけで、話し合いには応じない。地元の役場にも足を運んだが、当事者間での解決を勧められるだけだった。

困った二人はNPO「終活サポートセンター」(東京都中央区)に相談。水上由輝德理事(33)が仲介し、役場から改葬許可証が発行された。だがそれ以後も、住職は電話にも出なければ、寺を訪れても姿を現すことはない。改葬作業をしたくても手が付けられない状態だ。

水上理事はここ5年間で、「離檀料」についての相談が増えたと話す。中には離檀を求める檀家がこれまで墓地の管理費などを払っておらず、その費用が「離檀料」の名目で請求されるケースがあるという。

「墓地管理の対価は必要だが、『離檀料』という名目で請求することでお寺のイメージを悪くしている。管理費などはきちんと明示すべきだ」という同理事は「もちろん檀家の側が悪いケースも多い。菩提寺があるにもかかわらず、葬儀を依頼せずに納骨だけを希望する人が増えている。ただ『離檀料』などと口にせずとも、檀家から感謝の気持ちを持ってお布施を出してもらえるような関係を築くことが僧侶の役割ではないか」と話す。

京都市下京区の自営業、加藤悦子さん(55)も墓をめぐって近畿地方北部にある菩提寺とトラブルを抱えている。

寺は加藤さんの先祖を開基として江戸時代に創建。境内には「開基家」としての先祖代々の墓地があるが、10年ほど前に寺がその一角に歴代住職の墓を建立した。その際に、加藤さんや家族に無断で「開基家」の墓石を移動し、墓の下の土を掘り返すなどした。

トラブルの遠因は、曽祖父の代に一家が北海道に移住したことで、子孫は主に東京で暮らしたため、故郷との地縁や人間関係が断絶したことだ。ただ、墓は継承し、加藤さんの父は「父の遺骨を埋葬してから毎年1回はお参りし、その都度寺に10万円のお布施を納めた」と話し、加藤さんも墓参りを欠かさない。

墓石の無断移動について、住職は「小さな親切心が足らなかった」などと弁解したが、復旧費用を加藤さんらに請求。寺への親族の遺骨の改葬をめぐって住職や総代らと対立する事態も起きた。

加藤さんは「長年地元から離れていたため、寺の護持会の存在を知らずに未入会で、寺側から檀家扱いされなかったことも背景」と説明。

「一連のトラブルを受けて寺院規則などをいろいろと調べたが、寺への入檀や離檀などの条件が明記されておらず、寺と檀家の権利関係もはっきりしない。弁護士を入れても解決できなかった」とため息をつく。

「先祖の霊を冒瀆している」と寺への強い不信感を持つ加藤さんだが、「檀家制度は批判的に語られるが、それが残っているから今でも先祖供養ができ、神仏などの目に見えないものを大切にする文化が日本で維持されている」と考えている。

「時代に応じた寺院運営規則があれば、こんなにこじれることはなかった。檀家制度の良いところを継承するには、仏教界を挙げて諸規則を整備する必要があると思う」と語る。

(池田圭)