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寺はよみがえるか ― 檀家制度

2018年1月26日付 中外日報(寺はよみがえるか)

寺は誰のものか双方に有益な開放を

住職・門徒がペアで受講する大谷派の「元気なお寺づくり講座」
住職・門徒がペアで受講する大谷派の「元気なお寺づくり講座」

中国地方に住む元銀行員の男性(66)は、2年ほど前に菩提寺の護持会の世話役を辞めた。「寺の活性化のために頑張ってみたが、ばかばかしくなった」と言う。

「護持会」といっても年1回の総会や数回の役員会が開かれる程度。護持会費の未納者も少なくない。6年ほど前に世話役になった男性は立て直しを図ろうと、護持会の規約改正、会員名簿や会計処理の開示などを求めたが、住職や他の役員に聞き入れられず、嫌がらせも受けたという。

それでも「寺は住職のものではなく、檀信徒のものであり、さらには地域の人々のもの」との思いから護持会の会長選挙に出ることなども模索したが、寺側の態度は変わらず引き下がるしかなかった。寺側は取材に「よく分からない」と言葉を濁した。

男性は「これまで檀家は住職の言うことにただ従うだけで、そうした付き合い方をしてきたのも悪かったが、時代は変わった。宗教法人が優遇税制を受けているのは、公益性があってのこと。一体お寺は誰のものなのか」と問う。

「寺は檀家のために存在する。勝手に一般に公開するのはやめてもらいたい」

島根県の真宗寺院の副住職(42)は、ある男性総代からそう言われたことが忘れられない。地域に開かれた寺院を目指し、6年前に地域おこし団体の協力も得た本堂でのコンサートや「寺カフェ」などを行うようになったが、このクレームで休止を余儀なくされた。

総代の苦情は檀家のある集まりで出た意見を代弁したものだ。副住職を支持する檀家も多かったが、「その文句に本当に怖くなり、戸惑い、ひるんだ」と振り返る。

その後、副住職は自分自身が寺の外に出て活動する方針に転換。現在は地元の他宗派の僧侶と協働して若者向けの交流行事などに取り組む。「他宗派の仲間も『寺を地域に開放したい、仏教をもっと身近に』という思いは同じだ」と言う。

ただ、反省も多い。「あの頃は行事の回数が多過ぎるなど、今思えばやり過ぎだった。寺を何とかしたいと一人で気負い、檀家の存在を忘れていた。しっかりと合意を得た上で進めれば文句を言われることもなかったはず」。檀家とのコミュニケーションを親密にしながら、自坊での行事も少しずつ復活させる機会に備えている。

滋賀県守山市の三品正親・真宗大谷派蓮生寺住職(61)は、所属する京都教区で2016年度に計5回開かれた宗派主催の「元気なお寺づくり講座」を総代と二人で受講した。

講座は大谷派の寺院活性化策の一環で、僧俗協働の寺院運営を目指す宗派の方針から、住職・寺族と門徒のペアでの受講を原則としている。特に子ども会活動に熱心な三品住職は総代と相談しながら、次世代の中高生・大学生・子育て世代など年代に応じた寺への参拝行事を4年間で進める計画を立案した。

「お寺を住職のものだとは思っていない」三品住職は「もちろん教化活動は私がリードするし、役員会で意見も言うが、法要の準備や予算などはご門徒さんが決める」と説明。講座で総代と一緒に立案した計画の実行にそれほど不安はない。

ただ、気になることもある。計画案を寺の役員会に報告して意見を求めたが、積極的な提案はほとんどなかった。「『今まで通りでよい』という感覚が強く、『これから先、お寺が立ち行かなくなる』という危機感はない。そのためにも次代を担う青年世代への取り組みを企画したのだが」と話した。

(池田圭)