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寺はよみがえるか ― 檀家制度

2018年2月9日付 中外日報(寺はよみがえるか)

新たな縁を求め多様な信仰心に応える

境内で行っている滝行に引かれて若い人も多く訪れる(天台宗妙乗院)
境内で行っている滝行に引かれて若い人も多く訪れる(天台宗妙乗院)

愛知県東海市の天台宗妙乗院はこの10年ほどで檀家を大幅に増やした。

約200軒の檀家があった同寺に酒井圓弘住職(54)が入寺したのは1992年、29歳の時だった。酒井住職の師僧が住職を兼務し、葬儀、法事、月参りなど法務で寺を支えていた。

離檀が進んだわけでも法務が減ったわけでもなかったが、「これからは何もしなければ、寺から人は離れていく」との思いから、住職になった41歳の時、檀家に「寺を盛り上げるために私の好きにさせてくれるなら、寄付も護持会費も集めない」と宣言。了承を得て、インターネットなどを活用した寺院の新たな取り組みを始めた。

当時はまだインターネットで人生相談や講演会の講師を受ける僧侶は少なく、情報発信すると、多くの依頼が寄せられた。坐禅会や写経会も開いた。

講演料などの収入でお滝場を建立し、堂内の荘厳も変えていった。高さ約5メートルのお滝場に、本堂正面にステンドグラス、堂内には水琴窟や水晶などを散りばめた護摩壇。他の寺にはない魅力に引かれ、若者を中心に多くの人が寺を訪れるようになった。

酒井住職は「寺離れが懸念される現代では、寺や住職の個性に人が集まってくる」と言う。

近年「ペットは家族の一員」との意識から、ペットの葬儀や墓などを求める人が増えている。「そんな人たちが新たな檀家になる可能性がある」と話すのは、浄土宗教伝寺(京都府南丹市)の小泉顕雄住職(66)。

境内にはペット葬儀社が79年から運営する関西動物霊園がある。高さ30センチほどの墓石には「〇〇家」などの文字と共に、ペットの名前も刻まれている。納骨堂もあり、その脇の供物置き場には、水やペットフードが置かれていた。

檀家は約200軒。霊園ができてから約40年。ペット供養を通じて檀家になるのは1年に1軒あるかないかだが、動物霊園が財政的に寺を支え、ペットの墓参りに訪れる人が寺に活気を与えてくれるという。

70代の夫婦は約40年前に愛犬を失くし、霊園に遺骨を納めてから教伝寺を訪れるようになり、「子どももなく、墓を守ってくれる人もいない。愛犬の死を通じて縁のできたこのお寺の共同納骨塔に納めていただきたい」と、檀家になった。

小泉住職は「ペットのために仏様に手を合わせて供養したいという人がいる。その思いをくみ上げたい」と語る。

寺離れの背景には人口減少だけでなく、世代交代で檀家の意識が希薄になっているという現実がある。

埼玉県川越市の日蓮宗本應寺では檀家意識を持ってもらうために、新しい檀家には「入檀誓約書」を書いてもらう。日蓮宗の教義を信奉する、寺の年中行事には積極的に参加するなど、五つの項目が記されている。

星光喩住職(77)は「日蓮宗の教えや総本山といった基礎知識はもちろん、葬儀には僧侶が行くし、戒名も授けることを伝える。護持会費や寺の修繕費などの寄付があって大変ですよということまで話す」と言う。

誓約書を書くのを拒絶されることはほとんどない。星住職は「生家の菩提寺が日蓮宗の人も多く、寺との関係について理解しているのでは」と話す。

同市の人口は85年から30年間で約1・2倍になるなど増加傾向にあり、墓地を求める人も多いという。84年に境内の墓地を拡大した同寺でも、その頃から約30年で檀家は約2倍に増えた。

(甲田貴之)