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寺はよみがえるか ― 檀家制度

2018年2月14日付 中外日報(寺はよみがえるか)

檀家に依存せずカベ取り払い基盤強化

本堂前には2体のゾウの像と金運などをうたうポスターが掲示されている長福寿寺
本堂前には2体のゾウの像と金運などをうたうポスターが掲示されている長福寿寺

大阪市生野区の真宗大谷派仏乘寺は旧来の門徒との関係を変えることで寺を発展させた。貧困に苦しむ家庭の葬儀を葬儀社から依頼されたのをきっかけに、門徒以外の葬儀を数多く受けている。多い年は年間600~800件に上る。

昭和50年代、150軒ほどの門徒がいたが、中には「門徒の言うことを聞かない住職は出ていけ」と考える人もいた。布施の値上げをめぐりほとんどの門徒が離れたが、結果的に新しい取り組みができるようになった。

貧困家庭の葬儀は、施主だけでなく、葬儀社からも注目を集めた。多額の布施が見込めない葬儀を寺側が敬遠していたからだ。葬儀社の信頼を得て、葬儀の依頼も増えていった。

とはいえ、葬儀をした後に寺との関係が薄くなってしまう人も少なくない。法事の意味などを丁寧に説くことで、縁をつなぎ留めようと努めている。

「寺に来てもらわないと駄目」と、報恩講やお盆などの年中行事に加えて、無料の寄席や音楽会などの行事も企画している。藤並光憲住職(70)は「とにかく壁をつくらないこと。お寺側が貧困世帯などで対応に格差をつけていないか。差別せず、みんなのために精いっぱい尽くす姿勢が大切だ」と話す。

檀家によって寺院を護持してきた千葉県長南町の天台宗長福寿寺が、祈願寺へとかじを切ったのは6年前。今井長秀住職(49)は「寺業」理念を打ち出し、「2021年6月までに年間参拝者数200万人を実現する!!」と宣言した。

境内には「吉ゾウくん」と「結愛ちゃん」という高さ約4メートルのゾウの石像が2体安置され、金運をうたうチラシなどが貼られている。

現在、年間の参拝者は約15万人。目標にはまだ遠いが、6年前の年間3千人から50倍に増えた。約600軒の檀家の布施は寺院全体の収入の8%ほどだ。

「運営方針を変える上で檀家から賛否両論はある」と今井住職。「改革が成功していると実感しないと、なかなか協力は得られない。とにかく改革を進めるしかない」

檀家を無視して推し進めているわけではない。理念を丁寧に説明し、檀家回りを通じてのコミュニケーションを欠かさない。「いつも人がいて、境内に笑顔があふれている」と喜ぶ檀家もいる。

名古屋市天白区の曹洞宗地蔵寺は17年、高齢者が短期間宿泊できる施設「ビハーラ天白 サールナート」を開設した。同寺は戦後に保育園を開園し、その後、介護事業を展開するなどしてきた。

神野哲州住職(68)は「寺以外の事業によって寺から給料をもらわずに済むようになる。檀家の負担も減る」と話す。

ベッドタウンとして人口が増加している同区では、寺が門戸を開けば檀家が増える可能性はある。

しかし、家族葬など葬儀や法事の形が変化している現代では、檀家の増加が寺の経営基盤の強化に直結するわけではないとし、檀家に依存しない取り組みが必要だと指摘する。

神野住職は「施設の建設など初期投資が必要だが、公共性が高い福祉事業に寺が関わる意義も大きい」と言う。

(甲田貴之)

=「檀家制度」おわり