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この思い、亡き人に届け(2/2ページ)

2016年3月11日付 中外日報(伝えたい忘れない-大震災から5年)

漂流ポスト「会いたい」手紙に願い

各地から便りが寄せられる「漂流ポスト」。辺りはまだ雪が残っていた(2月、岩手県陸前高田市)
各地から便りが寄せられる「漂流ポスト」。辺りはまだ雪が残っていた(2月、岩手県陸前高田市)

同県陸前高田市の東南に突き出す広田半島の奥、住宅地の外れから林の中の道を進んだカフェ「森の小舎」の前に、古びた赤いポストがある。やはり震災で命を落とした人へのメッセージ、手紙を預かる店主の赤川勇治さん(66)が目印に立てた「漂流ポスト3・11」。震災前に横浜から田舎暮らしを求めて移住した赤川さんは、犠牲者の遺族に「あんたは地の人じゃないから話せる」と悲嘆を打ち明けられた。「では手紙にしてみたら」と勧めたのが契機で、「書くことで悲しみをちょっとでも外へ出せるといい」と考えた。

どこからでもカフェ宛てに郵便を出してもらう。ネットなどで発信し、今月までに150通余りが寄せられた。「トモちゃんが空に行ってから4年 会いたいよ 声聞きたいよ トモが空から見つけられるようにおかあさんは空色の車で走っているよ」。そんな文面が続き、一昨年の盆には50代の女性が津波で亡くした夫への手紙を持参して来た。夜通し筆を執り、封筒に入れて切手も貼ったが、ポストまで持っていったら会えるような気がしたという。「会えた?」。涙でうなずく女性に、赤川さんもうなずくことしかできなかった。

そんな手紙の数々を、赤川さんは近くの臨済宗妙心寺派慈恩寺で供養してもらう。津波で檀家53人が犠牲になり、100人以上の避難者を4カ月間受け入れた同寺の古山敬光住職(67)は懇ろに読経し、こう語った。「重いお便りです。本来、私たち宗教者がやるべき取り組みですね」

宮城県山元町で、壊滅した地区から仮設住宅に散り散りになって暮らす住民に、いろんな催しで悩みを語り合う場をつくる曹洞宗普門寺の坂野文俊住職(52)は「寺はごみ箱でいいのです。つらいことを捨てて笑顔になって帰ってもらうための」と話す。原発事故で生活を奪われた福島の人々の苦悩を傾聴する川上直哉・日本基督教団牧師(41)は、各地を回って事故の被害と心の傷の現況を発信する。月日の流れに抗して震災の惨禍を、苦しみや悲しみ、死者への思いを伝えようとする人々がいる。(北村敏泰)