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1、文化財「発見」 寺社はタイムカプセル

大津市歴史博物館学芸員寺島典人

2016.06.10~2016.07.01

  • 1、文化財「発見」 寺社はタイムカプセル
  • 3、仏像の調査 墨書銘見つかるのは奇跡
  • 2、仏像の年代判定 研究者同士の切磋琢磨で
  • 4、図録の作成 貴重な情報を後世に残す

「おっ、この阿弥陀如来は鎌倉初期頃だ!」「これはすごい、院政期の優雅な不動明王やろ?」。幾度と繰り返されるこのような場面。我々のような仏像を専門とする者がお寺に仏像を拝見しに行くと、時に文化財として価値のある像が再認識(いつも安置してあるので、扉を開く秘仏でない限り「発見」は少ない)されることがあります。

それまで静かに何百年もおまつりされてきたお像が、実は平安時代の典型的な作風をもっていた、などといったことが判明したりするのです。その度に私は、わが国の文化財伝存能力の高さは素晴らしく、「まさにお寺・神社はタイムカプセル」と、強く実感するのです。

数年前、職場近くの町内会の方が「うちの地蔵さんをみてほしい」と写真を持ってきました。一見してびっくり、南北町時代に院派が造立した像だったのです。この院派は平安時代よりわが国の仏師の最大派閥で、14世紀には足利将軍家の御用達でした。

おそらくこの像は、かつては園城寺に伝来していたと思われますが、それにしても当時の最高級品が町内のお堂にあるなんて。くしくも同じ作風の像が近くの公民館にも安置されており、他にもまだまだ出てくる可能性を肌で感じたものです。このような古い仏像は今知られていないだけで、実は様々な所に現存していると強く思いました。

仏像だけではありません。お寺で今も気づかれないままに使用中の伏鉦や鰐口などに、300年前の年号が刻まれていることもよくあります。北海道生まれの私にとって、それらがいまだに現役であることにはいつも驚愕させられます。「できたら博物館に預けて。無理でしたら、せめてもう少し優しくたたいてあげて」とお願いするのですが、はたして今もそうしていただいているのやら。

我々がお寺などで仏像をはじめとした古い物に出会うと、様々な意味で貴重な財産がその時新たに生まれることになります。それまで無言であったそのものが、所有者やその地域、さらには国民にとって大切な歴史と文化を、実に雄弁に語り始めるのです。