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1、人工知能AI 人間本来の能力再認識を

高野山真言宗・総本山金剛峯寺山林部長・総長公室長山口文章

2017.06.16~2017.07.07

  • 1、人工知能AI 人間本来の能力再認識を
  • 3、インバウンド 求めるものは「物」でない
  • 2、不寛容社会 伝統文化体系の否定招く
  • 4、日本に必要なもの 世界へ精神文化の展開を

高校1年生になった愚息は立派なゲーマーである。

もちろん「立派な」の意味は本来のものではない。言葉を補うとすれば「残念ながら」が良く似合う。愚息の華麗なゲーム操作を見ながら、DNAの偉大さを痛感する。三十数年前、残念ながら私自身が立派なゲーマーであった。

新聞紙上でAIという文字を見ない日はない。最近では世界最強の囲碁棋士がAIに3連敗したという。すでにオセロでAIは人間を凌駕し、チェスでも勝負にならない。手筋が複雑な将棋でも完全に負け越し、大局観が命である囲碁でも勝ち目がないとすれば、世界最強をめざす棋士のモチベーションはどうやって維持すれば良いのか。

東京オリンピックの年には自動運転の車が実用化されるという。アメリカの大手投資会社は600人のトレーダーを株式売買AIに替えた。宇宙に遍満する暗黒物質の謎をAIに解明させる事業が成功すればノーベル賞確実という。

人間が行ってきた仕事や研究をAIが高速かつ正確に処理することには様々なメリットがある。仕組みはとうてい理解できないが、AI化は時代の流れと静観せざるを得ない。しかし、イギリスのロボット工学者は「2050年にはAIロボットと人間が結婚する」と断言する。静観すれば人類は存亡の危機を迎える。

すでに人間がAIと競っている場合ではない。人間にしかできない分野の能力を再確認して充実させることが喫緊の課題であろう。

日本が生んだ希世の天才数学者、岡潔は「人間が人間である中心にあるものは、科学性でもなければ論理性でもなく理性でもない。情緒である」といった。さらに、日本人の深い精神性については「人と人との間には良く情が通じ、人と自然の間にも良く情が通じる。これが日本人である」と表現した。

今、人類は本来の人間としての能力を再認識することを求められている。その能力は目で見ることができず、何かで計ることも保存することもできないものである。どれだけAIが進化しようとも、その能力では新生児の足元にも及ばないのである。