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1、信仰と共感力 伝えるべき宗教者の使命

本門佛立宗妙深寺住職 京都佛立ミュージアム館長長松清潤

2018.01.26~2016.02.16

  • 1、信仰と共感力 伝えるべき宗教者の使命
  • 3、仏教の再生 海外からもたらされる
  • 2、坂本龍馬の宗教政策 仏教による平和国家望む
  • 4、人生の目的 人間性どう向上できるか

二十数年前、本山へ帰るタクシーの中で声をかけられた。「日蓮聖人が女性だったことを知っていますか?」。驚愕した。昼夜を問わず御消息を拝読しながら聖人が女性だったとは思いもよらなかった。この一大事を一般の方から聞くとは。

老練な運転手は戸惑う私を笑いながら言葉をつないだ。「そうでもなければあれほど女性の心を分かるわけがない」

私は顔を赤らめつつ深く納得した。後世の者が性別を疑うほどの共感力。男性が女性を、女性が男性を、人びとが他を思いやる人間性の中心に世界的宗教家・日蓮聖人がいた。あれから月日を重ねたが、手本の尊さに比べて私たちはどうか。

異なる価値観を認め合い、対話を重ねてゆく大切さを痛感する現代。グローバル化や多様化が進む一方で、保護主義の台頭や憎悪表現の広がりが懸念されている。インターネットやSNSは多様な価値観を共有する場というよりは偏った思考を醸成する場になりつつある。過激な発言で炎上するのも偏狭な感情で炎上させるのも共感力の欠如による現代的な病のように思える。

一つの信条を持つことで他者への共感力が薄れるとしたら信仰にはどのような課題があるだろう。

時に日蓮聖人を排他や独善と批判する人がいる。後世の信仰者が聖人の圧倒的な共感力と人間愛、慈悲を忘れたならそう思われても仕方ない。信仰と共感力は車の両輪のように結ばれていなければならないのだ。

東京五輪の大会エンブレムには「多様性の中の統一」「一人ひとりの多様な個性の輝きが結ばれて、未来へとつながる大会にしたい」という願いが込められているそうだ。その成果に期待したい。

一方、宗教家は普遍的な価値観や共感力を伝えられているだろうか。「ダイバーシティー(多様性)」の尊重はアイデンティティーを失うことではない。「何でもあり」は「何も無い」のと同じだ。他者を批判するのもよくないが、共感できても自分を見失っているようでは充実の人生とはならない。

信仰と共感力。宗教者が使命を発揮すべき時代だと自問自答している。