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学生の宗教意識はどう変わったか ― 20年間の全国調査から

國學院大教授 井上順孝氏

2016年6月10日付 中外日報(論)

20年の変化

2015年の調査結果は、他にも興味をひかれることがあるが、紙面の関係もあるので、1995年から15年までの20年間の調査結果を比較したときに指摘しておきたいことを若干述べる。

最初に述べたように、この調査の第1回はオウム真理教による地下鉄サリン事件が起こった年に行われた。この事件が若い世代に与えた影響は非常に大きかった。事件から20年がたつと、さすがにその影響は薄れてくるが、一定程度の関心は保たれていることが調査結果から分かる。

宗教に対するイメージはこの事件で大きく悪化したことは明らかである。95年以降は信仰を持つと答える人の割合は、非宗教系の大学だけでみると、ほぼ5~6%の間を推移した。これは92年に行った別の学生への意識調査と比較すると半減といっていいほどの減り方である。

ところが21世紀にはいると、信仰を持つ人の割合が少し増加傾向に転じた。また宗教に関心があるという人の割合も増えた。今回は非宗教系で7・7%であったが、12年は同じく8・0%、10年は7・5%であった。また信仰はないが宗教に関心があるという学生は、全体で90年代後半には25%前後を推移していたが、01年には3割を超え、12年には5割に達した。ただし今回は35%程度であったので、12年あたり、つまり大震災の直後くらいが、かなり宗教への関心が高まったピークだったのかもしれない。

神棚や仏壇がある割合と、初詣や墓参りをする割合は、興味深い結果になっている。神棚や仏壇がある家の割合については97年以降毎回質問しているのであるが、この間に神棚は約15ポイント、仏壇は約10ポイント減少している。ところが初詣や墓参りをする学生の割合はあまり変化がなく約5割である。どちらかといえば増加傾向とさえいえる。家庭祭祀は衰微傾向にあるが、宗教的習俗は一定の割合で継承されているわけである。

散骨・自然葬に関する意識の変化も興味深い。親が散骨・自然葬を望んだ場合に親の希望に従うかという質問には、ずっとほぼ8割が従うと答えている。ところが自分の葬儀に関して散骨・自然葬を希望するという学生は、90年代後半は3割程度であったが、15年は2割程度と減少している。葬儀については伝統的な考えに縛られなくなっているようだが、さりとて散骨・自然葬が好ましいと考える学生が増えたわけでもなさそうである。

オウム真理教に対する意識も何度か質問した。マスメディアにおける報道では、事件の扱いは時とともに荒っぽくなる傾向が顕著であるが、学生の関心は決して弱まっていない。オウム真理教についての報道に「非常に関心がある」と答えた学生は97年には13・4%いた。その後少し減ったとはいえ、12年で10・9%、今回は12・8%であった。これは信者の逮捕など、そのときどきの報道が関係するので、単純な比較はできないのであるが、「多少関心はある」学生まで含めると、7割程度に達している。この事実もまた見過ごされやすい。

この数値に比べると、大学でカルト対策を「やるべきだ」「やった方がいい」という回答の割合は5割少々と、やや少ない。ところがカルトという言葉を知らない学生が22%ほどいるので、それを除いて、知っている学生だけで見てみると、カルト対策に賛成する数値は7割ほどになる。オウム真理教の報道についての関心と呼応する割合なので、両者の相関をとって調べるつもりである。

むすびに

この調査は合わせると6万6千人余の学生を対象にしたことになる。20世紀末から21世紀初頭にかけての学生の宗教意識がどう変わったか。また変わらないのはどのような面か。そこに何が関係しているか。こうしたことを考える上では、他で得ることのできないきわめて貴重なデータと考えている。調査の報告書は毎回作成した。しかしそれらにおいては、主に単純集計を中心とした数値を紹介してきた。

これだけデータが集積すると、複数の回答結果のクロス集計、因子分析、また変化の要因の分析など新しい課題が生まれてくる。オウム真理教事件との関係については、宗教情報リサーチセンター編『情報時代のオウム真理教』(春秋社)、『〈オウム真理教〉を検証する―そのウチとソトの境界線』(同)などにおいて分析結果を示している。だが、それ以外にもこの間の社会変化として考察すべきことが多々ある。

そこで、分析すべきテーマを再考し、あらためてデータを総合的に分析する予定である。その結果については、16年度中に報告書として公刊する計画を立てている。