宗派立て直しへ駅伝魂
臨済宗佛通寺派 神田敬州宗務総長(56)

総代会との確執で管長(大本山佛通寺住職)が退任するなど、暗い話題の続いてきた臨済宗佛通寺派の宗務総長に昨年11月、“宗派一の元気印”が就任した。その明るさと行動力に宗派寺院住職や檀信徒の期待は高い。
体調不良で退任した布野秀峰・前宗務総長が、かつて財務部長だった時代に教学部長を務めていた。昨年5月に宗務部長として呼び戻されたのも、宗派立て直しの起爆剤になってもらおうという狙いがあったようだ。
元気の源は「駅伝」だ。自坊・修善院のすぐ近くにある広島県立世羅高陸上部のコーチを長年務める。昨年12月に都大路を舞台に行われた全国高校駅伝での結果は振るわなかったが、駅伝の強豪校として知られる。
自身も同高OBで、フィジカル面で選手を指導するのはもちろん、坐禅指導でメンタル面での強化にも一役買う。ちなみに青山学院大陸上競技部の原晋監督は同高陸上部の後輩に当たる。
修善院の境内には「走禅一如」の言葉が刻まれた韋駄天像(石像)があり、毎年秋に靴供養祭が営まれ、選手が練習で履き古した靴を奉納して感謝の祈りを捧げる。こうした様々な取り組みも、指導者と選手との深い信頼関係の秘訣だ。
総長に就任し、「本山、末寺、檀信徒の信頼関係をしっかり築き、新管長を拝請する体制を整えたい」と語る。平成の約30年間、様々な理由で管長が定着しなかった佛通寺派。その遠因の一つが、長い間「灰色の部分が多い」まま放置されていた本山経理だと指摘する。明瞭化を図るべく、まずは本山寺務体制固めに注力する。
(河合清治)