禅を核に生きた仏教
愛知学院大 引田弘道学長(67)

4月から曹洞宗関係学校・愛知学院大の学長に就任した。もともと鳥取の寺院に長男として生まれた。大阪外国語大フランス語科を卒業後、一般企業に勤めたが、寺を継ぐために仏教を学ぼうと東京大(印度哲学)に学士入学。当時、教授だった早島鏡正氏から「仏(フツ)から仏(ぶつ)だな」と言われたのが思い出深いという。
愛知学院大講師時代には、横浜善光寺の留学僧として英国オックスフォード大に留学。同大には前田惠學氏がいて、生きた仏教の重要性を説いていた。こうした善光寺の取り組みや前田氏の影響もあって「葬儀や法事だけでなく、生きた仏教、社会とコミットした仏教が重要だ」と考えるようになった。
愛知学院大は3年前から臨床宗教師育成を始めたが、その導入の立役者となった。「今ほど、僧侶の在り方が問われている時はない。新型コロナウイルスの影響で、故人をしっかりと送ることができない可能性がある。僧侶は何のためにいるのかと言われかねない」
世界宗教である仏教は、戒律を基軸に中国やスリランカなどのアジアに広まり、互いに影響を与え続けてきた。だが、日本の仏教は江戸時代以降、日本人だけのものになってしまった。本来の姿を取り戻してほしいと願う。
「禅や瞑想は欧米に分かりやすく、あちらで生きた仏教として受け入れられている。それを逆輸入すれば日本の仏教の刺激になるのではないか。総合大学である愛知学院大としては、禅を核にした日本文化として発信していければ」と抱負を語っている。
(赤坂史人)