学問の中立性を守る
浄土宗総合研究所 小澤憲珠所長(78)

浄土宗総合研究所所長に今年度、就任した。仏教学が専門で、長年にわたり「大乗菩薩道」を研究テーマとしてきた。「研究所は浄土宗の諮問機関、シンクタンクとしての役割も担っている。しかし『御用研究所』であってはならず、学問の中立性を守っていきたい。私は宗学の専門家ではないが、浄土宗の教えは法然上人の言葉が中心にあるべきだ」と強調する。
現在、研究所で進行中のプロジェクトは20ほどあり、内容は現代社会との関わりから文献調査まで多岐にわたる。所長就任後は一通り各研究会に顔を出したいと考えていたが、新型コロナウイルスの影響で研究所に出勤することもままならなくなった。しかしリモートで開かれるようになった研究会は、かえって遠隔地在住の研究員の出席率が上がり、活発な議論が交わされているという。
とはいえ自身はどちらかというとアナログ派。『般若経』や『瑜伽師地論』『十住毘婆沙論』等の漢訳仏典を中心に、『大正新脩大蔵経』のページをめくりながら研究してきた世代だ。2012年に定年を迎えるまで大正大の仏教学の教授として後進の育成や研究に邁進。「大学の研究室での他宗派の先生方との交流を通じ、学ぶことは多かった」と振り返る。
浄土宗教学院理事、教学審議会委員長、大本山増上寺璽書道場の教誡師などの要職を務め、世代交代の時機を探っていたところだったが、ぜひ所長にと請われた。「研究員は顔なじみばかり。私は自然体に構えて、各研究員の自主性に任せていきたい」と今後の運営方針を語った。
(佐藤慎太郎)