10年後を見据え改革を
真言律宗 松村隆誉管長(72)

8月1日に管長・総本山西大寺長老に就任。宗務長2期5年の経験を生かし「時代に即した姿を模索しながら、改革を進めたい」と意気込む。
自坊は大阪市住吉区の荘厳浄土寺。住吉大社と縁が深く、古代から近世にかけての遺構が残る境内で育った影響で考古学に関心を持ち、学芸員の資格を取得した。南山進流声明の玉島宥雅氏に師事し、自身は阿闍梨として約20年間、多くの僧侶に声明を教えてきた。
大阪真言青年会や摂津国大阪市霊場会の会長、宗議会議員や宗務長を歴任した。「自分から手を挙げたことはないが、多くの縁に恵まれ、いろいろなことを経験させてもらった」と振り返る。
宗派や本山の課題として、宗規宗憲の改正や経済基盤の強化を挙げる。宗務長時代に取り組んできたが、実現できなかった両課題に対し「まずは実行できる組織となるための改革を行う。そのためにも宗規宗憲の改正が必要」と話す。
経済基盤強化の主軸となるのは、自身が10年前から提案してきた西大寺境内の有料化だ。「本山は本当の意味で自立しなければならない。境内有料化を実現し、SNSを活用した情報発信などを推進したい。経済基盤の確立は大変なことで、10年はかかるだろう。でも先延ばしにはできない」
その胸中には、亡き妻の「今の10年が先の10年に続いている。さぼっていたら落ちてしまうよ」という言葉がある。
「自分は威風堂々とした立派な管長ではない。けれどもそこにこだわるのではなく、宗派や本山のことを第一に考え、社会と真摯に向き合ってあるべき姿を模索していきたい」
(原田梨里)