「暦神」の側面もPR
八坂神社 野村明義宮司(62)

1日付で京都市東山区の八坂神社宮司に就任した。ライフワークは、同神社や祇園信仰にもゆかりの深い陰陽道や暦の研究で「祇園祭の神社というだけではなく、暦神としての側面も知ってほしい」と話す。
1977年開設の皇學館大文学部神道学科の1期生。実家の石川県七尾市飯川町・久志伊奈太伎比咩神社の社職を継ぐため神職の道を志したが、東京乃木神社の宮司だった小串和夫氏(現皇學館理事長)との出会いが転機となった。大学の指定神社実習で同神社に奉仕したところ、小串氏に「故郷に戻る前に経験を積まないか」と誘われ、卒業して12年間奉職。八坂神社に転任後、30年を経ても「故郷で奉仕するための学びの期間」という意識だったが、予期せず宮司となった。
乃木神社時代に祭神・乃木希典の座右の書『中朝事実』の思想基盤に陰陽道があることを知り、その探究にのめり込んだ。転任当初は意識しなかったが八坂神社も歴史的に陰陽道と密接で、不思議な縁を感じている。陰陽道の代表的な典籍『簠簋内伝』は、卜占や方位・暦日の吉凶を説き、八坂神社の祭神・牛頭天王(素戔嗚尊)の縁起を記す。2002年からは自ら編纂した神社暦「暦神祇園暦」の発行とその普及・活用にも取り組んでいる。
「神職でも知る機会が少ないが、茅の輪、修祓、装束など、現在の神社神道の中にも陰陽道に由来・関連するものもある。本来、太陰太陽暦(旧暦)で行うべき祭祀と、現行のグレゴリオ暦(新暦)との齟齬についても神職として問題意識を持つべきだ」と提起する。
(武田智彦)