知らされて知る他力
真宗大谷派 木越渉宗務総長(64)

10月14、15日の宗会臨時会で選出された。里雄前々内局と但馬前内局で教化や人権問題の担当参務としてキャリアを積んだことで知られ、2015年の真宗教化センター・しんらん交流館の立ち上げに尽力。人権問題についても約100年前の全国水平社創設当初から指摘されてきた観無量寿経の「是旃陀羅」の語の差別性を巡る問題への対応に前向きな姿勢を示す。
自身の真宗観や人権意識の原点は、父の樹・元宗務総長(91)の米国留学と同国・バークレー東本願寺住職就任による幼少期の海外生活にあるという。
時は1960年代。米国社会の激しい人種差別に接する一方、通っていた小学校では担任教諭から人種や国籍を超えた他者尊重の姿勢を学んだ。そんな中、あるアジアの国を見下す発言をした自分に愕然とする体験をした。「一番の親友がその国の出身だったので余計にショックだった。差別はされる側もする側も傷つくのだと思った」と振り返る。
「真宗はそうした痛みや悲しみを忘れさせる教えではなく、それに意味を与えてくれる教えだと受け止めている」。如来は克服至難の根源的な差別心を抱えた我が身の姿を問うてくる。「真宗はそんな自分に驚愕して頭を下げる教え」と説く。
座右の銘は平野修・九州大谷短期大教授の「我々は知らされて知る以外に知り方を持たない者である」。若い頃に自坊のある金沢教区で僧侶養成機関・金沢真宗学院の設立に関わった際に同教授の謦咳に接したことが財産の一つと説明。「この気づきが『他力』ではないか」と話した。
(池田圭)