「御寺」の品格守り抜く
真言宗泉涌寺派 川村俊弘宗務総長(65)

9月の選挙で続投が決まった上村貞郎管長(泉涌寺長老)から宗務総長(同寺寺務長)に任命された。約40年間、泉涌寺の寺務に携わってきた豊富な経験を生かし、皇室の菩提寺ゆえに「御寺」と呼ばれる同寺の品格を守り抜く決意だ。
寺内では対外折衝よりも事務を主に担ってきたという。「皆をぐいぐいと引っ張っていくタイプではない」と謙遜するが、その分他者の意見にじっくりと耳を傾け、丹念に拾い上げていく手法を心掛ける。
宗務総長として、約70の末寺の課題解決に向き合う責務もある。「この1年間だけでも、後継者問題を抱えたお寺が3件あった。今後様々な問題が出てくる」。前職の総務部長時代にはコロナ禍の影響を受けた末寺の宗費減免などの負担軽減策の事務にも関わっており、今後は末寺との連携をより強化し、人材育成などにも注力する考え。
泉涌寺もコロナ禍で参拝者減少に悩まされているが、「御寺の品格を落としてはいけない」と、収入に目を奪われてなりふり構わない寺院運営に陥らないよう気を引き締める。「泉涌寺の存在は京都でも意外と知られていない。まずは存在を多くの人に知ってもらうことが大切」
2026年に迎える泉涌寺の開山・俊芿(月輪大師)の800年御遠忌は、同寺と末寺の一体感を高め、全国にその存在をアピールする絶好の機会。末寺の僧侶らからなる御遠忌局と連携し、開山塔の修復や泉涌寺展の開催などを検討している。
自坊は塔頭法音院。妻・長男と囲む夕食のだんらんがつかの間の息抜きの場だ。
(岩本浩太郎)