一歩一歩地道に奉公
時宗 東山心徹法主(74)
遊行の法燈の相続者であり、弘教の中心となる時宗法主に1月に就任した。7年の任期制となって初めての法主で、遊行75代としての道号は「他阿一浄」。宗祖一遍上人と総本山清浄光寺(遊行寺)から1字ずつ選び取ったものだ。
寺の出身ではなかったが、縁あって僧籍に入ることになった。師僧からは「ひとに嫌な思いをさせるな」「ひとのおかげで自分がある」「ひとに頼まれたらとにかく自分にできるだけのことをやれ」などと口酸っぱく言われたことを思い出す。振り返れば今の自分の拠り所になっていることばかりだと気付かされる。
鎌倉の寺の住職を拝命後、書にも本格的に取り組むようになった。漢字の成り立ちそのものを感じ取ることができると、篆書や隷書などの古い書体を好んで揮毫してきた。「書は、活字では伝えきれない自分の思いを伝えることができる」との自負があり、今では日本総合書芸院の理事長を務めるまでになった。
これまでの人生が様々な縁に恵まれたものであったことを強調。「時宗の本髄は一歩一歩地道なもの。すぐに結果を求めずに、人との結び付きやつながりを大事にして培われていくもの」なのだと感じている。
だからこそ大上段に構えず、少しでも人の役に立てるよう、これまでの経験や教わってきたことを人々に伝えていくことこそが肝要だと心に留めている。「人間は一人では生きていけない。私もこれまで周りの人たちに助けられ、支えられてきた。それに応えて法主を務めることが最後の修行であり、最後のご奉公」とほほ笑んだ。
(佐藤慎太郎)