博士の遺志を大切に
中村元東方研究所 藤井教公理事長(73)

前田專學理事長の退任に伴い3月1日に就任した。4月1日からは東方学院学院長も兼任し、中村元博士の目指した真理探究の「寺子屋」を拡充していく。
藤井新理事長は学生の時、中村博士が東京大を退官する年の講義を聴講した。「懇切丁寧で分かりやすく、いろんな話が出てきて、大学者はすごいものだと思った」
静岡県の寺院に生まれ、12歳で東京・日本橋小伝馬町の日蓮宗身延別院に入り僧侶修行を始めた。専門は中国天台教学、日本法華思想史。東京大大学院を満期退学し、北海道大大学院教授を経て、現在は国際仏教学大学院大学長を務める。「気が付けば学問の道を歩んでいた。実践修行の日蓮宗僧侶としては落第」と笑う。
東方研究所は学園紛争の嵐が吹き荒れていた1970年、「真に教えたい一人と真に学びたい一人が集まれば、学院は成り立つ」との信念で中村博士が設立。東京大を退官した73年に寺子屋・東方学院を開講した。
22年度は関東、関西、中部で、仏教・語学・美術などの51講座を用意している。一人でも希望者がいれば開講し、高名な専門家と少人数で学べるのが特徴だ。「受講者は年齢も経歴も様々。一人一人の表情を見ながら講義を進められる」。オンライン講座も行っており、僧侶のリカレント教育に活用してほしいと願う。
2023年に学院創立50周年を迎える。「50年誌」と「中村元選集・総索引」の作成が進む。「一人でも多くの方に中村先生の遺志が伝わり、人生に意味を見いだそうとする人たちが集う学びやとなるよう努めたい」
(有吉英治)