檜皮葺きを支える原皮師 大野浩二さん(55)

ユネスコ無形文化遺産に「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が昨年12月に登録された。「木工」「装飾」「彩色」等17分野のうち「檜皮採取」に携わる「原皮師」として37年間、檜皮葺き建物を支えてきた。保存団体の全国社寺等屋根工事技術保存会の会長も務める。
河合清治
ユネスコの無形文化遺産への登録おめでとうございます。
大野 ありがとうございます。今回登録された17分野のうち「檜皮葺・杮葺」「茅葺」「檜皮採取」「屋根板製作」の4分野が現在、私が会長を務めている全国社寺等屋根工事技術保存会が保存する技術なので、とても名誉でうれしく感じています。今後もおごることなく、今まで以上に伝統技術の保存と継承のために職人の育成、研修等に努めていくつもりです。
私自身は丹波の原皮師の職人です。時代の流れとは逆行するような仕事で、ほとんど表舞台に立つことのない地味な仕事ですが、これを機会に、世界に注目される仕事なんだと若い原皮師たちに誇りを持ってもらえるようになればと願っています。
原皮師はかなり厳しい仕事だと聞きます。
大野 檜皮は樹齢80年以上のヒノキの立木から採取します。「振り縄」という端に木の棒の付いた縄を木に巻き付け、足掛かりと腰綱にし、木のヘラで皮をむいていきます。下から上に登りながらむいていくのですが、大きな木に朝から半日登ったまま作業するときもあります。小さな木なら半日に5本くらい剥ぐこともあります。大きな木ほど達成感がありますね。
一番気を遣うのは、木の肌を傷つけないことです。うまく皮がむければ赤い薄皮が残るのですが、まだ生きている部分で成長を続け、10年後に再び採取することができるのです。木べラから手に伝わってくる感覚を頼りに慎重に剥いでいきます。採取した檜皮を、専用の包丁で2尺5寸を基本とした長さに裁ち、30キロの丸皮に仕上げるのも原皮師の仕事です。
最初に採取したものは「荒皮」と呼ばれ、歩留まりが悪いのですが、2回目からは「黒皮」と呼ばれるきれいな皮が採れます。特に丹波産の檜皮は「黒背皮」といって、光沢と粘り気があり、耐久性が高い高級品として知られています。
手間のかかる地道な作業ですね。原皮師は何人くらいいるのですか。
大野 現在、うちの保存会には35人の原皮師が所属しています。古くから檜皮の産地は京都、兵庫を含む丹波地方で、職人も丹波に多…
つづきは2021年1月13日号をご覧ください