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古刹で育ち、蛇笏賞を受賞した俳人 柿本多映さん(93)

ほっとインタビュー2021年4月12日 09時34分
古刹で育ち、蛇笏賞を受賞した俳人 柿本多映さん かきもと・たえさん=1928年、大津市で天台寺門宗総本山園城寺(三井寺)の福家守明・第161代長吏の長女として生まれる。47年京都女子高等専門学校卒。76年に句作を始め、赤尾兜子、橋閒石、桂信子の各氏に師事。88年現代俳句協会賞。2017年現代俳句大賞。『柿本多映俳句集成』で20年蛇笏賞。句集に『夢谷』『蝶日』『仮生』など。

琵琶湖南西の天台寺門宗総本山園城寺(三井寺)で生まれ育った。蝶や蛇、曼珠沙華など境内・長等山の豊かな環境が原風景として作品に現れる。昨年蛇笏賞を受賞。「俳句は理屈ではない。現実をただ述べるのではなく心の中に見える風景を詠む」。93歳の今も精力的に句作を続けている。

須藤久貴

父は天台3派が太平洋戦争中に合同した時の天台宗管長を務めた福家守明・三井寺第161代長吏、次兄が俊明・第162代長吏、三兄が昨年亡くなった英明・第163代長吏。僧侶に囲まれた幼少時代を過ごされた。

柿本 父は特別な人でした。近いようでいて遠い。僧侶の男の人は、法要で絢爛な衣を着ていたのがうらやましかった。女性に生まれた自分はいつか寺を離れなければならないとの思いがありました。

「揚羽蝶遠忌の柱叩くかな」「美術館に蝶をことりと置いてくる」のように、蝶を詠んだ句が目立ちます。

柿本 蝶は身近な存在でしたが、それは幼い頃に父の紫の僧衣のたもとが風になびくのを見た印象もあるかもしれません。

三井寺は木が多く、うっそうとして暗かった。闇は深いけれど怖くありませんでした。花や虫、蛇、生き物がいっぱいいましたから。イノシシが下りてくると、急いで横へ逃げました。境内の掃除をしている人は、マムシを見つけるといきなり手でつかんで皮を裂いて血を吸っていました。滋養がありますから。命が循環していることをその時感じました。

「生国や冬真青な曼珠沙華」のように、曼珠沙華を扱った句も数多いですね。

柿本 かつて三井寺の寺領があって、小作の人が年貢米を納めに来ました。土手に曼珠沙華がいっぱい咲いていて、田舎に連れていってもらうと曼珠沙華を持ったまま歌っている青年がいて、その花を私にくれました。それが原風景です。

曼珠沙華は秋に咲いた後も枯れません。青々とした葉っぱが冬に残り、生き生きとしています。心も何もかもきれいな真っ青になればいいと葉っぱが主張しているんです。

「曼珠沙華一本見ゆる奥座敷」は子供の頃住んでいた光浄院客殿(戦後に国宝指定)に実際に咲いていたものを思い出して作った句です。「わたくしが昏れてしまへば曼珠沙華」は、夕暮れ時にふと気がつくと曼珠沙華が一本こちらを見ているように感じました。植物でも意志を持っています。曼珠沙華は私から見られているのが嫌なのだなと思ったのです。

句作はどのようにされているのですか。

つづきは2021年3月24日号をご覧ください

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