解放運動100年の歴史を伝える水平社博物館館長 駒井忠之さん(49)

来年3月3日に全国水平社の創立100周年を迎える。水平社発祥の地である奈良県御所市柏原に1998年に開館した水平社博物館は来年の節目に向けてリニューアル工事中。駒井忠之館長(49)は「特にこれからの時代をつくっていく中学生に主体的な関心を持ってもらえるような工夫を凝らしたい」と力を込める。
池田圭
全国水平社創立100周年に向けた思いは。
駒井 全国水平社は1922年に生まれ、部落差別はこれまでの部落解放運動や人権教育、行政の取り組みなどを通してかなり改善されつつあります。しかし、差別が完全になくなったわけではありません。水平社の理念である人間の尊厳と平等を求めていくことと、差別を許さない不屈の精神。この二つをこの博物館を通して皆さんとさらに共有していきたいです。
博物館の概要は。
駒井 1986年に始まった地元の地区改良事業をきっかけに設立の声が上がり、98年に開館しました。5万点以上の史料を所蔵し、主要な約400点を常設展示しているほか、部落差別問題に関する春の特別展と、部落差別以外の人権問題を取り上げる冬の企画展が主な活動です。来館者の3割程度が小中高生で、大人では教育関係者を中心に行政関係、企業関係など様々。宗教関係者も多いです。
100周年に向けたリニューアルのポイントは。
駒井 これまでの常設展示は柏原の地から水平社が始まった経緯や、創立後の運動などの説明が中心ですが、大正期や昭和初期の当時の史料の文章は小中学生には難しい。そもそも展示史料や所蔵史料の大半が(絵画や写真などではなく)テキストという事情もあります。
それらも踏まえて史料の解説をコンパクトに分かりやすくしたり、イラストなどを用いたり、有名な漫画のセリフを借用したりするなど主に中学生が興味を持って見学できるよう、工夫を凝らしたいと考えています。これからの時代をつくっていく若い人たちの人権意識を高めて自己肯定感を育み、未来がより人権を尊重する社会になっていくことを願っています。
LGBTQ(性的少数者)や在日外国人、SNSの利用を巡る問題など人権問題が多様化する中、部落差別問題への関心は相対的に低下しているように見えます。
駒井 水平社の創立の理念は部落差別だけでなく、人間の尊厳を求め、あらゆる差別を解消していこうというものです。例えば、水平社の綱領には「吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に…
つづきは2021年12月8日号をご覧ください