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椅子取りゲーム 社会と意識の両面から変革を

2018年11月30日 10時18分

大手自動車会社の会長が長期にわたり、有価証券報告書に報酬を約50億円も過少申告したとして逮捕された。経営再建に辣腕を振るった有名な外国人経営者だっただけに、多くの人々に衝撃を与えた。それにしても、得ていた役員報酬額の莫大さには驚かされる。

欧米の企業では、経営トップが桁外れの報酬を得るのは通例である。企業を率いる責任と才覚と尽力の結果として、相応の額をもらうのは当然だというコンセンサスがあるからだ。しかし、あまりに報酬額に差が出てしまえば、社内にも不公平感が漂い、会社全体の士気にも影響を及ぼしてくる。

この格差が一企業内にとどまらず、社会全体を覆ってしまっているのが、日本も含めた多くの国の現状だ。しかし、人間の能力には多少の差があるとはいえ、たまたま自分が置かれた役職や地位、仕事の性格によって、あまりに大きな差が生じてしまうのはおかしいのではないだろうか。

本紙11月7日付社説では格付けと序列にこだわる愚について述べたが、学術やスポーツの分野で賞を得る人と次点の人では、実力の点では紙一重の差しかないのに、その後の処遇に天と地ほどの差が出てしまうというのが、その端的な例である。同じことは経営者にもいえる。大企業の経営トップだからといって、ほかの人々よりもずば抜けて優れているわけではない。時の運や本人の才覚、努力の結果、僅差が大差に開いてしまう。

格差社会の底辺においても同様である。持てる能力や技術の差はそれほど懸け離れてはいないのに、いったん正規職に就けなかったら、そこで待遇や給与に大きな差がつき、その差はますます開いていく一方である。現在、就業者の約3分の1が非正規労働者であるが、その要因は長期不況の影響や経営合理化などによるところが大きい。

競争社会は椅子取りゲームに似ている。椅子に座りたい人は大勢いるが、椅子の数は限られている。そこで競争が始まり、たまたま諸条件が幸いして椅子に座れる人とあぶれる人が出てきてしまう。また、良い席を占めた人は、容易にそこから動こうとはしない。その状況の固定化が社会の格差をつくり出すのである。

我々誰しもが、椅子にあぶれる潜在的可能性を有している。この自覚が反省と謙虚さを生む。そしてそこから、お互いに限られた椅子を分かち合ったり、あるいは新しい椅子を増やしていったりするなど、創意工夫もできるはずだ。社会を変えるには、意識をも変革することが求められるのである。

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