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合成生物学の衝撃 0と1の間の無限大とは

2019年1月7日 10時12分

遺伝子改造社会と呼ばれて久しい。現在ではゲノム(全遺伝情報)を読むだけでなく、ゲノムを書くことができるようにもなった。これを可能にしたのは遺伝子工学とコンピューターによる情報処理の飛躍的な進展である。生命を遺伝子レベルから再構成しようとする新しい学問分野が合成生物学だ。

2016年、ついに「人工細菌」ミニマル・セルが作製されるに至った。これは、細菌のゲノムから生命活動に必要なDNAを取り出し、そこから最小限の遺伝子を選んで人工的に合成したDNAを別の細菌に組み込み直すという方法を取る。そうすると、この人工DNAによって新たなたんぱく質が作られ、理論的には31回の分裂を繰り返すことで細胞の全分子が入れ替わって「人工細菌」となるという。

通常、合成生物学といえば、遺伝子工学技術を用いて既存の生物のゲノムを編集し直すものだが、ミニマル・セルはこのゲノム編集のレベルを超えて、ゲノムそのものを化学合成して作られたものだ。それは絹糸から布地を織り出すように、確かに1から作られた人工生命体である。ここまで科学が進歩したのかと、生命科学の進歩には驚嘆させられるものがある。

ただし、ミニマル・セルは、最初にDNAの取り出し元の細菌があり、最後に新たな組み込み先として別の細菌を必要とする。つまり、最初と最後に既存の細胞生体システムを用いたものであり、全くの無生物(物質)から生物を作るという意味で、0から人工生命体を作製しているわけではない。0と1の間には、いまだ無限大の距離が存在しているのである。

どんな生命体にも、そのゲノムを授けてくれた親がいる。その親はさらにさかのぼれば生命の源の存在にまでたどることができる。それが悠久の生命、つまりいのちである。長い生命の歴史の中でどの生命体もそれぞれの形でいのちを受け継ぎ、今日まで生存を続けてきた。ミニマル・セルには直接的な親はいないが、これもまた悠久の生命史の極北に位置するものではないだろうか。

どの宗教にも、いのちは神仏の賜物であるとする教えがある。1から生命を作ることは人為的に可能でも、0からはそうであり得ないことを、そうした教えは物語っているように思う。遺伝子やゲノムは、たとえ化学合成が可能であるとはいえ、これらはどこまでもいのちの微小単位なのである。合成生物学の時代、宗教は生命の取り扱いに対して、これまで以上の謙虚さと慎重な姿勢を求めてやまないのである。

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