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科学技術の時代に考える 阪神・淡路大震災の教訓

2019年1月18日 09時32分

災害への警句を多く残した寺田寅彦は『天災と国防』で「災禍を起こさせたもとの起こりは天然に反抗する人間の細工」「いやが上にも災害を大きくするように努力しているものはたれあろう文明人そのもの」と断じ、文明が進むほど天災の被害が拡大するのに防御策は講じられないことを嘆いている。

寺田がこの随筆を書いたのは1934年室戸台風の後だが、その文明批判は現代に通じることが阪神・淡路と東日本の二つの大震災の経験でも分かる。近年、科学技術は人の改造にまで踏み込むなど自然の摂理に力ずくで背く動きが懸念され、科学技術への信仰に基づく国を挙げての開発志向もやむことがない。だが、経済成長を夢中で追う社会は深刻な病理が内攻し、災害で顕在化する。発生から24年たつ阪神・淡路大震災で肝に銘じたその教訓をいま一度思い起こしたい。災害に弱い社会は持続可能性を問われてしまうからだ。

この震災は、戦後半世紀に及ぶ地震の静穏期に発展した近代都市のもろさを見せつけた。震災発生後、耳にした「最初に地震が、次に火災が来て最後に災害が来た」という指摘が今も記憶に残る。

6400人を超える犠牲者や家屋を失った被災者の多くは高齢者で、地震発生後、駆け込んだ避難所の寒さや劣悪な環境で次々と亡くなった。災害弱者という言葉や心のケアが注目されたのもこの災害だ。被災者の困難は仮設住宅に移ってからも続き、生活や自宅再建のめどが立たず、生き残ったことへの罪責感にさいなまれ、孤立死が後を絶たなかった。被災者を最後に襲った災害が、それだ。政治の無策が際立つ震災だった。

さっきの言葉でかっこ内の「火災」を津波に、「災害」を放射線に置き換えれば、そのまま東日本大震災に当てはまる。自然現象としての地震を災害にしたのは、つまるところ人災的要因だが、そのような国をつくってきた流れは今も変わらない。その証明は原発再稼働に執着する国策一つ挙げれば十分だ。同様の文脈で2025年大阪万博誘致の熱中ぶりに違和感を持った人も少なくはなかろう。

別の随筆で寺田は、日本全体が「一つのつり橋の上にかかっているようなもの」だと表現しているが、平成の時代も昨年の漢字の「災」が2回目だったように、連綿と災害が続いてきた。それは半面で被災者の痛みを自分に関わる問題として受け止めることの難しさを示してもいる。だが、科学技術の進歩で災害の大規模化も想定される中、その努力を放棄すればまた尊い命が失われていく。

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