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不透明な未来 東アジアの宗教の重い役割

2019年4月19日 09時01分

シンガポールの大学で教える中国語が母語の学者、Aさんと話す機会があった。「シンガポールでは民主主義は弱い。市民が形作る下から(ボトムアップ)の運動も少ない。全ては国家にお任せする体制だが、それで人々は結構幸せに生きている。下からの運動が大きな力を持って政治が混乱し、政府が統治能力を失うなど、強圧的な統制が起こる韓国や台湾、香港と比べ、うまくいっているといえるのではないか」。おおよそこのような話だった。

では中国はどうか。もし、中国に民主主義的な自由が拡充すると、1989年の天安門事件のような事態に至る。そこで、人々が抱く欲求はできるだけくみ上げて国家が対処するが、市民による下からの運動は許さない。多数政党制も代議制も認めない。思想・言論の自由もデモも制限される。ウイグルやチベットなどの宗教や民族で団結する集団は抑圧に苦しむが、大多数の国民は市民的自由にさほどの関心がない。Aさんはこのように見るのかもしれない。

シンガポールは中国系住民が優勢だが、インド系住民やムスリムの住民も相当数いる。隣国はマレーシアやインドネシアで、イスラームの考え方が政治に強く反映している。中東の国々と同様、下からのイスラーム主義勢力の運動にさらされながら、西洋風民主主義とは異なる政治体制を模索している。そのような地政学的環境の中で下からの運動が弱くて安定的に治められているシンガポールは西洋風の民主主義とはいえないが、現代の比較的豊かな国の中では成功例といえるのではないか。

北朝鮮、中国、ベトナム、香港、韓国、台湾と国名(や統治単位)を挙げて話が進む。では、日本はどこに位置するのか。シンガポールに近いかもしれない。

ともあれ、こうして横に並べ、儒教や大乗仏教が主流の思想伝統であった東アジアの国を比較し、民主主義の可能性を考えることから、東アジアの未来を展望する手掛かりが得られるのではないか。近代にはキリスト教や西洋思想、そして社会主義の影響が強く及んだが、基底には儒教や大乗仏教の伝統が横たわっている。では、基本的人権と公共性を尊ぶ民主主義社会において、儒教や仏教、そして道教や神道はどのような意義を持つのか。広く重い問いだ。

Aさんとの会話はこのような方向に進んで、共にうなずき合った。これは学術的な課題にとどまらない。宗教界にとっても重要な課題だろう。解くのが容易ではないが、様々な次元でアジアの対話を進める重要性は確認できた。

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