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中外日報宗教文化講座

いのちを追悼する 一人ひとりに心込め

2019年4月24日 14時51分

乗客ら107人の死者を出した兵庫県尼崎市でのJR福知山線の列車脱線事故から25日で14年になる。地元では毎年、宗教者が追悼の祈りを捧げる姿があちこちに見られる。理不尽な事故や事件などによって命を失った人とその遺族たちの無念、悲嘆は年月がたってもそう簡単に癒えることはない。東日本大震災や熊本地震、豪雨禍といった自然災害、原発事故の犠牲者にとってもそれは同じであり、いくら“新しい時代”が声高に叫ばれても、復興さえ満足に進まない状況ではなおさらだ。

グリーフケアに関わるある僧侶は講演で寄り添いの大切さを話したところ、聴衆の男性に「簡単に言うな! 私たちは暗い海で救命胴衣もなく溺れているんだ。一緒に溺れてくれるのか」と怒りをぶつけられた。脱線事故で大学生の娘を亡くした父親だった。僧侶は「共感できると安易に思い込まず、悲しみに向き合うしかない」と受け止めた。宮城県名取市の津波禍で地域が壊滅した閖上の現場には、中学生の息子を失った母親が「死んだら終わりですか? 復興は大事なことですが、たくさんの命がここにあることを忘れないで」とフェルトペンで書いた学校の机が残されている。支援を続ける京都の僧侶は「我が子が戻らない母親にとっては、復興はあり得ないのです」と語る。

「石巻」を読めず「復興より選挙が大事」と言い放つようなレベルの者を大臣に据えた政権はともかく、死者・遺族の慟哭が聞こえる被災地では自治体の心のこもった動きもある。東北の3県では、この3月11日までに計14市町で犠牲者一人ひとりの氏名を刻んだ公設の慰霊碑が作られた。名取市では948人、同県東松島市では1112人に上り、「死者を分け隔てなく弔いたい」と同県女川町では母親の隣に同時に亡くなった胎児の名前も記した。岩手県釜石市では遺族も交えて論議をし、死者の9割を超える997人の名前を刻んだ。死者の氏名は、その固有の物語、生きた記憶の象徴である。

19人の重度障害者が殺害された「津久井やまゆり園」事件では、関係者の様々な意向で被害者の氏名が公表されなかった。同園に長年務めた元職員の男性は、親しかった入所者たちが匿名の「障害者」とひとくくりにされるのにやり切れなかった。「障害者は人間じゃない」と語った事件の被告。「社会に、我々の中に、同じような優生思想がないでしょうか。誰もが堂々と名前を名乗って生きられる世の中にしなければ」。そう願って地元で僧侶と慰霊を続け、犠牲者の碑の建立を目指している。

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