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仮想体験と現実 宗教的救済のリアリティーとは

2019年5月8日 16時12分

遊園地やゲームセンターでバーチャルリアリティー(VR)体験をする人が若い世代を中心に増えてきた。VRゲームは従来のビデオゲームとは異なり、映像空間に文字通り身を置いた疑似体験ができるのが特徴だ。意識の上で、これは仮想体験だと自覚しつつも、あまりの臨場感の故に脳が現実の出来事のように反応する。

VRはゲームだけでなく、スポーツの練習や災害時の訓練、PTSDの治療や緩和ケア、時空を超えた観光体験などに、幅広い用途が期待されている。その一方で、没入力が深いメディアのために、危険も隣り合わせである。VRが兵士の戦闘訓練に使われたりすれば、恐るべき殺人トレーニング器具にもなりかねない。要は諸刃の剣であり、使い方次第で善にも悪にもなるということであろう。新しい技術が登場するときは、いつもそのように言われてきた。

一つの懸念がある。VRはその技術が高度になればなるほど、人間の脳をますます容易に仮想現実に浸らせ、これを本当の現実と取り違えさせてしまう。それにより、逆に手応えのある本当の現実に向かう力を奪うことになりはしまいか、ということだ。つまり、安易な疑似体験をつくってしまって、本来は自ら努力して築き上げる現実経験から逃避させてしまうのではないか、という懸念である。

一粒飲めば幸福になる薬が開発されたとして、あなたはそれを毎日服用して幸福になりたいと思うだろうか。そこで得られる幸福は、あくまで薬物によって得られた疑似幸福にすぎず、決して本物の幸福体験ではない。人間にとって幸福の実感とは、棚からぼた餅のように安易に得られるものではなく、苦労や努力の中から勝ち取られていくものではないだろうか。

かつて宗教が「民衆のアヘン」だと批判されたことを、ここで思い出してもよい。この批判は、たとえ一面的なものであれ、宗教が天国における救いを強調するあまり、自らこの世の中で奮闘して幸せな人生や社会をつくることを回避させてきた事実を確かに突いていた。その意味で、宗教の所為が現代のVRの問題と無関係だとは言い切れまい。

宗教が説くのは、仮想的な救済観ではなく、どこまでも現実の救済である。この現実的救済を得るためには、修行という形での心身の不断の鍛錬が必要であるし、また人々の苦の現場で自ら身をもって行う実践も求められるであろう。このようにして実感されるリアリティーこそが、宗教による真にリアルな救済の根本体験となるはずである。

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