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第16回「涙骨賞」を募集 中外日報宗教文化講座

沈黙を強いられる世で 声なき声に耳を澄ます

2019年5月13日 10時24分

科学を志す者は、教科書に「何が書かれていないか」を問い続けねばならないという論がある。教科書の成熟した理論体系にこだわり過ぎると、新たな現象や理論を排除し、科学の発展に壁をつくる。趣旨はそうだが、学界に権威付けられた教説を覆す少数意見の方に真理があり得る、という含意がある。

少し深読みすると、それができないのは研究者が自己の評価への懸念から自説を封印、大勢に順応し沈黙するからで、未知を探求する科学にその姿勢はなじまないという主張になる。それなら、俗世間を写し取ったような話である。

「沈黙の螺旋」という理論を耳にする。多数派と見なされる意見は声高に語られ、マスメディアなどで拡散され続ける。その結果、少数派は声を上げづらくなり、やがて沈黙を迫られていく。政治が絡み、世論が分裂したときなどに生じる現象という。それが日常茶飯事と思うほど、光が当たらぬ小さな声は無視されていく昨今の世相だが、ここでは明暗が分かれる分かりやすい事例として2012年にパキスタンでナビラ・レフマンさんとマララ・ユースフザイさんを襲った災禍を挙げてみたい。

当時9歳のナビラさんは米国CIAのドローンによるミサイルの誤爆で負傷、祖母が即死した。ドローンは米国南部の空軍基地から遠隔操作されていた。その後、ナビラさんは支援団体などの努力で渡米し、15年には来日もして無人機攻撃の停止や、戦争に使うお金を教育に回せば平和に寄与するなどと訴えたが、彼女の声は世界にさほど届いていないようだ。

一方、マララさんは知らない人の方が少ないだろう。当時15歳のマララさんは女子教育の大切さを訴えてイスラム過激派に銃撃され、奇跡的な回復後ノーベル平和賞を受賞した。今年3月に来日、面会した安倍晋三首相は6月のG20首脳会議で女性教育の充実を議題として提起すると述べた。

二人の発信力の天地ほどの差。ナビラさんの受難を語ることは対テロ戦争の機運に水を差すとでも言うのか。だが、テロへの軍事行動は多数の民間人の巻き添え死という悲劇を生む。声は小さくても彼女はその証人であり続ける。

沈黙に戻ると、世間体を気にする日本は時代の空気で一定方向に走りやすい。本来は少数意見を代弁する役割を担うべきメディアの論調も危うい世論を反映しがちで「沈黙の螺旋」が生じやすい国柄だ。そんな中で孤立する声なき少数意見を誰かがくみ取らないと、社会の進歩を阻害し、再びかつての轍を踏むことになりかねない。

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