PR
購読試読
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
宗教文化講座
PR
中外日報宗教文化講座

続発する交通事故 他者思いやる禅の心を

2019年5月22日 10時42分

中国仏教は、4回に及ぶ弾圧を経験した。生活に困窮した民衆が寺院へ駆け込み、剃髪して僧衣を着ければ、日々の食事にありつくことができる。だが、そのような“にわか出家”が増えると税を負担する者が減少し、国家財政が苦しくなる。だから皇帝は寺院を破却し、僧尼に還俗を強制した。天台宗の3代座主・円仁は唐で修行中に、武帝による3回目の「会昌の法難」に遭遇し、その見聞・体験を『入唐求法巡礼行記』に書きとどめている。

4回の弾圧は、当時の皇帝の名にちなんで「三武一宗の法難」と呼ばれている。中華人民共和国発足後の紅衛兵による寺院破壊を加えると、法難は史上5回に及んだことになる。しかしそのたびに、中国仏教は生き延びてきた。現在の中国の寺院では、車座に着いた僧たちが念仏を唱える姿を見ることができる。布施に頼らず自給自足の体制をとった禅寺だけが生き残った。

寺院の僧尼の集団生活は、釈尊時代の僧伽に始まった。副寺、知客、典座、殿司など役職分担が複雑化した禅堂の円滑な運営を図るため、唐代の百丈禅師が「百丈清規」という生活規範を定めた。その原文は散逸したが、宋代に補強改定された「禅苑清規」から、原文を想定することができる。

その内容は、禅堂内ではこのような振る舞いをしてはならないということを細かく定めた「べからず」の集成で、文字通り箸の上げ下ろしまで規制しており、息が詰まりそうだ。しかし熟読すれば、底に流れているのは、他者に迷惑を掛けてはならないという思想であり、この規則を守る限り、伸び伸びと生活ができる。

ここから連想されるのは、中国の禅寺で定められた清規に、現代の日本の交通法規に通じるものがあるのではないか、ということだ。赤信号では止まれ、直進車には道を譲れ、横断歩道では歩行者優先を、こんな場所では駐車禁止をなどと、事細かに定めている。だがこのルールがあるからこそ、どの車も伸び伸びと走行できる。

平成から令和に移る時代の節目に、なぜか幼児を巻き込んだ痛ましい事故が続発している。免許を返上すべき状態なのに運転を続けたり、まぶしいからと前方注意を怠ったり……運転する側はついうっかりでも、その結果は過失の一言では片付かない。被害者はもとより、加害者側にも、事故はその後の人生に決定的な影響を残す。

全てのドライバーが禅堂の清規の「他者に迷惑を掛けない」思いやりの心で運転することを期待したい。

川崎無差別殺傷事件 「無敵の人」の誤用を考える6月14日

先頃発生した川崎市での無差別殺傷事件は、長期間引きこもりだった51歳の男の凶行だった。その数日後、引きこもりの長男=当時(44)=が父親に殺害されるという痛ましい事件が続…

SNSの闇 議論し、見識の蓄積を6月12日

5月中旬、マレーシアの16歳の少女が自殺した。少女は自殺する前にインスタグラムの自分のアカウントを使って一つのアンケートを試みていた。自分が死(D)を選ぶか、生(L)を選…

トリックはいけない 「令和」時代の改憲論6月7日

ホトトギスには卵をウグイスの巣に産み付け、ふ化・育成を肩代わりさせる托卵と呼ぶ習性がある。ふ化の早いホトトギスのヒナはウグイスの卵を巣から押し出し、繁殖を脅かす。つまり天…

PR
年間2万キロワットを発電し、新電力事業者にも売電している寿光院の太陽光パネル

再エネ電力利用、寺院に広がる

ニュース6月14日

42年ぶり全寺院総合調査 豊山派

ニュース6月13日

寺院解散時の事務経費、助成制度創設へ動く 天台宗

ニュース6月12日
宗教文化講座
  • 中外日報購読のご案内
  • 時代を生きる 宗教を語る
  • 自費出版のご案内
  • 紙面保存版
  • エンディングへの備え― 新しい仏事 ―
  • 新規購読紹介キャンペーン
  • 中外日報お問い合わせ
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加