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トリックはいけない 「令和」時代の改憲論

2019年6月7日 13時39分

ホトトギスには卵をウグイスの巣に産み付け、ふ化・育成を肩代わりさせる托卵と呼ぶ習性がある。ふ化の早いホトトギスのヒナはウグイスの卵を巣から押し出し、繁殖を脅かす。つまり天敵だが、卵を見分けにくくするホトトギスの擬態が勝っているらしい。

ウグイスには迷惑なトリックというべきか。人の世にも似通った話は珍しくないが、まず改元で勢いづく憲法改定の動きを挙げねばならないという声を聞く。『万葉集』に息づく平和への祈りを含意する「令和」に政権の都合のいい解釈を施し、民心の高揚に乗じて憲法の平和主義を危うくするのは本末転倒という主張である。安閑とウグイスに甘んじていては将来に禍根を残すという警鐘でもある。

「令和」の発表から2カ月以上が過ぎ、当初聞かれた「国書」か「漢籍」か、など典拠を巡る論争は「北東アジアは一つの漢字文化圏」という落としどころを得て生活の中に定着した感がある。それには考案者とされる国文学者の中西進さんが平和論者であることも関係していよう。

中西さんは、太平洋戦争での310万人に及ぶ日本の戦没者に対する前の天皇陛下の祈りを米国・リンカーン大統領の有名なゲティスバーグ演説と重ね合わせ、要旨下記のような文章を日本ペンクラブ編『憲法についていま私が考えること』に記している。ゲティスバーグ演説は、その理念が日本国憲法前文に盛り込まれている。

《新しい日本が目指したのは自由で平和な国。もし平和を放棄すればどうなるのか。平和憲法は時代にそぐわぬと勝手にきめつけて放棄すれば三百十万人は残酷な死者、無駄死の死者としてアジア・太平洋の全域に横たわり続ける。それでいいのか。日本人はみな人間失格者となるのか。陛下お一人にお任せしておこうというのか。大地に横たわる無残な亡霊から戦死者を救い出すたった一つの手段が、現在の日本国憲法である》

この一文からも明白な中西さんの立場が「令和」に反映しているだろう。東京空襲など戦禍を嫌というほど経験した、という中西さんの歴史観の裏付けもあるはずだ。

戦争を知らない政治家たちが「お父さんは憲法違反なの?」と自衛官の子が泣くから、と「典拠」不明の情緒的な理由で改憲を主導したり、北方領土問題の解決に核大国との戦争話を持ち出したりするのとは思想の深みが全く違う。

ところでウグイスには托卵を事前に阻止する防衛行動をとることが分かってきた。その知恵に人間が学ぶ日が来るかもしれない。

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