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「星野君の二塁打」 「道徳」教科書の問題点

2019年6月19日 11時23分

「星野君の二塁打」。以前から小学校の教科書に載り、最近は正式教科とされた「道徳」の教科書にも採用されて論議を呼んでいる逸話だ。少年野球選手の星野君は試合で監督から走者を送るバントを指示されるが、打てる気がして悩んだ末に強打に出る。それが決勝二塁打となって勝ったチームは選手権大会出場が決まる。仲間は喜ぶが、監督は「チームの統制を乱した」と厳しく指摘し、星野君の大会出場を禁じる。選手は皆うつむき、星野君は涙をこらえる。

問題は、監督がここで「犠牲の精神の分からない人間は社会に出ても社会をよくすることなんかできない」と強調すること。これだと、「試合では監督のサインを守れ」から、「上の指示、決まりはいかなるときでも絶対」になってしまい、以前問題になった日大アメフト部の危険タックル事件さえ想起させる。もちろん勝てばいいというものではないが、正しいかどうか、なぜそうなのかの論議が大事なのであって、ある一方的な価値観のみを児童に押し付けるなら、「個性や一人一人の考えの尊重」「決まりの意味をみんなで考える」といった本来の幅広く深い情操教育から見ても程遠い。この話の意味について自由に思考する機会を子供たちから奪うのではないか、というのが論点だ。

この教科書の内容は文部科学省学習指導要領の「よりよい学校生活、集団生活の充実」に準拠する。社会や国語も含めた検定教科書の問題点を指摘したくるみざわしん氏の演劇「テキスト 闇教育」が各地で上演され好評を呼んでいるが、それは事が教科書の記述にとどまらず、何となくきな臭いこの時代の風潮と直結するからだろう。検定で道徳教科書に「国や郷土を愛する態度を」の意見が付いたことで、少年が散歩で話す相手が「パン屋さん」から「和菓子屋さん」に書き換えられた。「新しい時代」の「美しい日本の伝統文化」なるものがこの程度なら、あまりに“噴パンもの”だ。

以前の教科書に出た童話「スイミー」。小さな魚が仲間を大きな魚に飲まれ、独りになって海を旅する。最後に小魚が集まって巨大に見せかけ、大きな魚を追い返す。だがこれも、孤独に耐えながら世間を学んでいくという原作の主題よりも、「協力して力を発揮する」という結末だけが強調されがちだ。「二塁打」も戦後間もなく出版された原作の、星野君が打席で葛藤する場面は教科書では省略。そして監督に諭されて自分で考える次のせりふもカットされている。「星野君、異存はあるまいな?」「はい、異存はありません」

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