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放浪者とよそ者 意識されない価値観の理解

2019年7月3日 11時22分

宗教社会学者ジンメルは、マックス・ウェーバーも高く評価し、ハイデルベルク大教授に推薦したが、就任できなかった。それは彼がユダヤ人であったためだとされている。そうした経験の故か、ジンメルは人々の心の底に潜む見えざるフレームのようなものを深く分析し、社会関係の形式という視点を提起した。上下関係、分業など、全ての社会関係に見いだされる形式が指摘されている。

その中でとりわけ興味深いのが「放浪者」と「よそ者」に関する議論である。放浪者とは「今日訪れ来て明日去り行く者」であり、よそ者とは「今日訪れて明日もとどまる者」である。分かりやすい例を挙げれば、観光客は放浪者で、近隣に住むようになった外国人はよそ者である。さらにジンメルは「よそ者」を貧者、内部の敵と一括りに論じている。

注目したいのは、一般に人々は「放浪者」には優しいが「よそ者」には厳しいという点だ。このジンメルの指摘は実に的確である。現代日本でもそうした傾向をあちこちで見いだすことができる。

オリンピックに向けて「おもてなし」の心が盛んに強調される。オリンピックの際にやって来る人たちは、ジンメルの区分を適用すれば「放浪者」である。こういう人たちにはおおむね優しい。他方、日本に居住する多くの外国人へのまなざしは、必ずしも温かくない。時には近隣の国から来た居住者に対し、「国へ帰れ」などと激しいヘイトスピーチを浴びせることさえある。

この残念な現象は、むろん日本だけの話ではなく、世界のほとんどの国で見いだせるに違いない。ジンメルは社会というものが持つ、そうした特性に冷徹な分析を加えたと見なせるのである。

そうしたことを踏まえ、具体的に何をすべきか。宗教界の多くは総論として平和を願い、争いが起きないことを目指している。だが各論になると、「よそ者」への厳しい態度もなくはない。日本に住む以上、日本の宗教や文化に従ってほしいというような主張は、受け取る側からすると、排斥されていると感じられる場合もある。

食べ物や服装の多様性の受け入れに比べて、宗教的価値観の多様性を受け入れることは、格段に困難さが増す。特に当人が、宗教に基づく戒律ではなく、日常的な習慣と思っていることの方が厄介である。それ故、多様な宗教文化についての学びの課題はそれぞれの戒律の違いといったことから、さほど意識されていない価値観の違いに、もっと目を向けていく段階になっている。

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