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「黒い羊」は求めない 自分の頭で考える社会

2019年7月5日 10時49分

集団の一部構成員の評価を貶めたり嫌悪感を集中させたりして排除し、集団全体の一体感を高めることを心理学で「黒い羊」効果と呼ぶ。情報化の現代はマスコミやネットで攻撃の対象を渉猟することが日常茶飯で社会現象化した印象さえあるが、その心理は「黒い羊」探しと似通っているようである。

攻撃対象も「生活保護」や「在日」「LGBT」「沖縄」のほか「負」の日本史にきちんと向き合う歴史観など旧来のものはもとより、近年は弱者や少数派を擁護する人々や政権批判するリベラルな言説にまで広がり、様相は相当複雑だ。少しそれるが、有名人の言動をとがめる「不謹慎狩り」もますます熱を帯びている感がある。

先日の川崎市の児童ら殺傷事件で「引きこもり」を犯罪と結び付ける誤解が生じたように、多くの場合、攻撃側は事実関係に無頓着で、付和雷同的に時の風潮に同調する点が共通する。深く考えることのない情動的な思考が一気に拡散する土壌が、この社会によどんでいる。そこに不気味さがある。

とげとげしい世相を考える上で、昨今、なぜ忖度とハラスメントが重なって問題化したのかを説く論考が参考になる。

巷間語られる忖度は相手へのおもねりだが、その本質は日本的なムラ社会で培われた「村八分」を恐れる集団内の自発的な従属意識だ。ハラスメントも、本当は行為を受けた側が苦痛と感じたかどうかによるが、同調圧力の強いムラ社会的人間関係の中で、その苦痛が顕在化しにくかった。「個の自立」といわれるように、ようやく集団内の理不尽に気付き、それがパワハラやセクハラだという認識も高まって伝統的な精神風土に異議の申し立てが始まったのは、まだ最近のことに属する。

その場合、長く集団の論理に生きた人々は自立した個人の動きに「秩序を乱す」と倒錯した反応を示しがちだ。日常的に抱く自己の無力感や苛立ちの裏返しだろうが、それが非寛容につながっていく。「黒い羊」探しの社会現象化の一端がこれでうなずけるが、大事なことは、集団への同調ではなく、自分の頭で考える習慣だ。

戦後日本は最短距離で経済成長を遂げた。アスファルトで固めた高速道路がそれを象徴するが、時には効率を忘れ、脇道に入るゆとりがないと人は生きる意味を失う。でも、脇道では自分の頭で考えないと迷ってしまうだろう。

宗教が安らぎを追求するものである限り、無関係な話ではない。脇道でたたずんでいる人々こそ信仰を求めているはずだから。

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