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AIが拍車かける 巨大な拝金主義社会

2020年1月9日 14時11分

『西遊記』を題材にした中島敦晩年の短編『悟浄歎異-沙門悟浄の手記』に印象深い文章がある。「いつかは来る滅亡の前に、それでも可憐に花開こうとする叡智や愛情や、そうした数々の善きものの上に、師父は絶えず凝乎と愍れみの眼差を注いでおられるのではなかろうか」――悠久の星空の下、野宿する一行の中で一人目覚め三蔵法師の安らかな寝顔をのぞき込み、沙悟浄はそう思った。この作品の発表は太平洋戦争中の1942年。短い命への哀惜の情は、当時の時代状況をも映したものか。

翻って現代。身近に戦争がないのをいいことに、限りある命をひたすら金もうけに費やす人々がいる。世界で最も裕福な26人の資産が世界人口の半数近い低所得層38億人の総資産と同じ。所得格差は急激に拡大している、などと聞けば悟浄ならどうつぶやくか。

近年はAI(人工知能)が所得格差拡大の大きな要因とされる。

AIは人に役立つ高機能ロボットを連想するが、「負」の側面も大きい。人が関与せずとも事前に組んだプログラム通り自動的に敵を殺傷する兵器になり得るし、一部の人に自動的に利益をもたらすシステムもつくれる。今、後者のからくりがネットなどITの世界で進行しているようだ。キーワードはビッグデータやアルゴリズムなど小難しいカタカナ語である。

一例だが、IT大国・米国では受験生が目指す大学への合格確率を精査の上、大学が求める合格者モデルを熟知した家庭教師と合格保証付き指導プランを提案し、それを受け合格した受験生に大金を支払わせる契約がビジネス化しているそうだ。大学内の情報やネットなどで集めたビッグデータ、最適解に導くアルゴリズムが駆使される。多額の費用を払えない学生は排除され、教育格差から所得格差へと悪循環が深まっていく。

もとより教育に限らず、社会の様々な分野で富裕層はますます富み、貧しい人々は「花開く」機会も奪われるプログラムが仕組まれている。日本も大同小異の状況が加速していくことだろう。

ちなみにグーグルなどの頭文字を取りGAFAと呼ぶ巨大ネット企業4社は、経営者が世界の富豪最上位に並ぶ。半面、キリスト教徒には未来の苦難の予告と解されるヨハネの黙示録の「四騎士」になぞらえる向きもあるという。

AIは生身の人間を数字化し、最大効率と操作する側の最大利益の追求に終始する危険性が伴う。数字には慈悲の眼差しは届き難い。長い目で見て、人の世に貢献するかどうかの聡明な判断が欠かせない。

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